ザワザワ、ガチャガチャと騒がしい男子校の昼時の食堂は今まで煩わしいと思っていたけど、今日ほどこの騒がしさが有難いと思ったのは初めてだ。

マジ、ウケル。

まさかココまであいつの予想が的中するなんて、一回マジであいつが所有している王道話を読んでみるかなぁ?

あいつって誰って?

あいつってのは俺の寮の同室者である矢野平ってやつ。
で、平は腐男子ってやつだ。そんでもって本人いわく完全無欠のバイだそうだ。
口を開かなければイイ男である平は確かに昔よく可愛い系を喰ってたけど、最近運命の出会いが有ったそうで山ン中にある男子校にも関わらず可愛い彼女がいたりもする。
と言っても彼女は平のお仲間だったりする。
つまりそう言う所の出会いらしい。
この間、会ったけど喰い付きが凄かった。
その凄さに思わず、確かにこの子は平の運命の人だなと納得してしまった。

不覚にも………

で、その平いわく新年度が始まったばかりの月に時期外れの今日来たばかりの転校生が起こす奇想天外の行動を観察している最中なのだが、マジでウケル。

平が言った通り俺様会長が転校生のもじゃもじゃにキスしてるよ、しかもディープ。

あ、転校生が会長殴った。

まぁ普通殴るよな。

それにしても周りに居るチワワモドキども、うっせーな。
どっから出してんだよ、その叫び声。

〜ん、なんかイラついてきたな。

食欲も失せたし。


何より、あいつがこっち見ないし。

もういいや、昼寝しよ。

俺は思えば即行動派でぎゃーすかうるさい食堂をさっさと抜ける。
いつもの昼寝場所に到着すると同時に携帯が震えた。
何気なしに携帯を開いて受信しているメールを開く。

そこには、カワイイとだけ書かれてある。

訳が分からず添付されていたモノを開くと、そこに俺が映っていた。

しかもその写メは俺がさっきまでいた食堂で撮られたものだった。

いつの間に撮ったんだ、これ………

確かヤツは携帯をいじった様子は見なかったし、こんな顔になったのは最後の方だけだ。

…と、思いたい。

顔が赤くなるのが分かる、自分自身が恥ずい。

タイミングを計ったように目の前に有る携帯の画面から、この写メを送ってきたヤツから電話がかかってきた。
慌てて通話ボタンを押して、思いのまま叫ぶ。

「瑛真! なんだよ、あの写メ! かわいくないっ!」

『ふふ、かわいいよ』

「かわいくない!」

『かわいいよ、なんてったって可愛い恋人の嫉妬した可愛い顔なんだから』

「っ〜〜、だ、か、ら、かわいくないっての!」

『俺にとっては、世界一かわいいんだよ』

甘く響く俺の大好きな声に、更に赤くなったと思う。

『恵』

「なんだよ」

『おいで』

「…………」

『部屋で待ってるよ』

答えも聞かずに切れた、もう用が無くなった携帯を上着のポケットに適当に詰め込んで、全速力で瑛真が待ってる寮に走る。

山の上に有るこの学園は無駄に広い。
校舎から寮に行く間の時間が歩いて20分ほどかかるなんて、何のための寮だよ!
土地なんて余りまくってんだからもっと近くに造れよな。

くそっ、瑛真が待ってんのに!

何とか寮に駆け込んで、丁度待機していたエレベーターに飛び乗る。

この学園はと言うか高等部は思春期の男どもが集まってるせいで特殊な環境になってる。
それにお坊ちゃん校なもんだからやたらプライドが高く、美意識も高い。
だから生徒会なんて金持ちで顔が良い奴らが選ばれる。
そんでもってそんな奴らに群がる親衛隊なるものが、また厄介で仕方ない。

それでそんなヤツラから隔離するために生徒会役員などには最上階の一人部屋が与えられる。

しかもその階に行くには特殊なカードキーが必要で、俺はそれを持っている。

何故なら俺を待ってる瑛真は、何と生徒会の副会長をしているからだ。

瑛真のこ、こ、恋びと、で、ある俺に、「はい、いつでも来て」と渡されたから持ってるのだ。

とにかく俺はそのカードキーをかざして動き出したエレベーターを遅いと心の中で罵り続けた。

やっと到着したエレベーターの扉を押し開けるように隙間に体を捻じ込み、瑛真の部屋まで少しだけどまた走る。
あと少しと言う所で瑛真の部屋の扉が開いた。

「恵、早くおいで」

柔らかく笑いながら扉を支え、俺を待ってるその姿が王子様に見えるのは、俺だけ?


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