俺は自分勝手な思いつきで恵を振り回し、傷付けてしまうどうしようもない愚か者だ。
だからと言って恵を手放せることは出来ない。
考え何て浮かばない。
ただ恵が俺の側に居て欲しくて、俺は恵を抱き締め、許しの言葉を紡ぐだけ。
「ごめん、ごめんなさい、恵…」
抵抗は無かった。
だけど身体は硬かった。
力加減が出来るはずもなく、ただ離れたくない一心で恵の体を掻き抱いた。
どれぐらいそうしていたのかはわからない。
でも硬かった恵の身体からふっと力が抜けた。
ゆっくりと俺の背中に回り、抱きしめてくれる温かい腕。
ぴったりと寄り添う、恵の温かさ。
そしてしっかりと向き合う。
「瑛真、今回は許すよ」
「恵……ありがとう」
「でも…」
「解ってる、二度とこんなこと繰り返す愚かな真似はしない」
「ん、よろしい」
「ありがとう、恵、愛してる」
「うん、俺も…」
ゆっくり伏せられた瞼に口付ける。
眦に溜まっている涙が綺麗だ。
だけどもソレは悲しみの涙。
俺が吸いとり、無くしたい涙だ。
零れ落ちた涙を辿りキスを降らせる。
「ぇぃま…」
熱く甘い吐息交じりの呼びかけに、俺は迷うことなくその甘い唇を貪った。
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