なんだかんであまり会えなかった二日間が終わった。

メールや電話は毎日しているが、やっぱり本物の藤弥が居ないと味気ない。

でも今日は休日で、しかも藤弥とデート。

待ち合わせの時間よりかなり早いが待ってなどいらない。

向かった先は待ち合わせの定番と言える駅前の広場。

ざっと見たところ、藤弥はまだ来ていなかった。

携帯で時間を確かめて、早過ぎだと自分に苦笑した。

広場の出入り口を見渡せる場所を陣取り、藤弥の事を考えながら時間を潰そうと思っていると待ち人が目の中に飛び込んできた。

ピンクの花が可愛らしくあしらわれている白いワンピースに七分袖の空色カーディガン、柔らかな髪はふんわりと内巻きにされて、うっすらと化粧されているみたいだけどキラキラと輝いているようにしか見えない。

俺が恋した、もう一人の藤弥。

もう一人って、おかしいか…。

でも間違いなく俺が恋した人なんだけどな…。

何考えてんだ、俺は、恥ずかしいヤツだな、俺って。

キョロキョロと辺りを見渡している藤弥に手を振って呼びかける。

「藤、こっち!」

「昌隆君!」

あぁ、めっちゃっカワイイ!!

俺を見つけたと可愛い笑顔になった藤弥は、そのままの可愛い笑顔で小走りに俺の所まで来てくれた。

少々息がはずんでいる藤弥の唇はプルプルで今すぐ貪りつきたい。

「待たせちゃったみたいで、ゴメンね」

ぅわ、藤弥に言われるとドキドキするなこのセリフ。

「そんなに待ってないよ、さっき来たところだったし」

実際にそんなに時間は経ってないしな。

「それならよかった」

薔薇色のほっぺたが可愛いけど、エロく見えるのって俺だけか?

「今日は一段と可愛いね」

「本当に!?」

「そのふんわりした髪形、藤にすごく似合ってる」

「そ、そうかな?」

いつものストレートよりも幼さを演出してるその髪をするっと指を絡めてさらっとした髪の感触を楽しむ。

照れて伏せ目がちの藤弥は色っぽい。

「時間よりちょっと早いけど、行く?」

「う、うん」

それじゃレッツゴーと軽くふざけて、藤弥の空いてる手を取って指を絡める。

藤弥も嬉しそうに握り返してくれる。

藤弥と手を繋いで寄り添いながら、ゆっくりと歩き出す。

今日はランチデートだ。

藤弥が前々から行きたかったイタリア料理店に行く。

人気の高い料理店でランチでさえも予約してないとなかなか店の中までたどり着けない店で、藤弥の予定を予め訊いておいて予約しておいた。本当は先週行きたかったのだが、藤弥に予定が入ったのだから仕方ない。

藤弥は本当に残念がっていて、今日は本当に嬉しそうだ。

駅前広場から店まで歩いて十分弱の距離。

だけど待ち合わせ時間よりも早く来てしまった俺たちは予約していた時間よりも30分も早い。

いくらなんでも早過ぎだよなって事になって通り道がてら、他の店を覗く事になった。

駅前と言う場所のおかげで店には困らないけど、店が多過ぎる気もする。

どう見ても女の子な藤弥はショッピングが好きなようで、あの店この店と迷っている。

そんなに迷ってる間に時間は過ぎて、予約の時間が迫っていた。

見るからに失敗したと言う顔をしている藤弥にランチ食べた後に寄る事にしてもらい、イタリア料理店に向かった。

雑居ビルの3階にあるその店はバルコニーもあってカフェ風で落ち着いた店内だった。

まぁ夜になればシックで大人なレストランになる事はネットで知ってるけどね。

ランチタイムが始まる時間に予約していたにも関わらず店の中は満員だった。

予約していた名前を店員に伝えると頼んでおいたバルコニー席にすんなりと通してくれた。

黒いウッドデッキが敷かれてある緑に囲まれたバルコニーには籐製のソファーとテーブルが置かれアジアンテイストだが置かれているクッションや日よけのイタリアンカラーがうまい具合にイタリア感を出して違和感が無く、落ちついた雰囲気だ。

早くも気にいった様子の藤弥は、連れて来てくれてありがとうと押し倒したいほどの可愛い笑顔で伝えてくれた。

頼んだランチメニューは量も味も申し分なく、金額もリーズナブルでかなり高評価だ。

藤弥もまた来たいと言ってるので、また来る事になりそうだ。

満足して店から出た俺たちは藤弥が迷って行けなかった店を回って買い物をしたりと遊んだ。

最初のデートくらいは健全にと、良い時間帯になった事だしお開きにしようと藤弥をいつも通り家に送る事にした。

藤弥が買った買い物袋を玄関に置いて帰ろうと外に出ようとしたら、藤弥が腕にしがみ付いてきた。

「藤弥?」

「あ、あのね、昌隆君」

「うん?」

「今日ね、明日の夜まで家、誰も居ないの…」

……これは…。

「だから、その、泊まっていかない…?」

「いいの?」

「ダメ、かな…?」

上目遣いにウルウルした瞳。

羞恥で赤く染まったほっぺ。

いじらしくも俺の腕に縋りついてくる柔らかい身体。

「じゃ…、泊まらせてもらおっかな…」

据え膳に飛びつかない男って、男じゃないよな。


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