いつの間にか俺は堂本の膝の上に跨り乗っていた。

自分の尻や太腿から伝わってくる、引き締まった硬さに羨ましさを感じつつもドキドキが止まらない。

堂本に取られてた手が堂本にされるまま堂本の胸にあてられた。

「どうした、触るんだろ？」

腰にあった手がぐっと引き寄せる。

バランスを崩して顔を堂本の胸にぶつけた。

「…はぁぅ…」

張りのあるしっかりと筋肉に覆われている厚い胸板。

其処から聞こえる緩やかに刻まれる鼓動。

其処から与えられる、心地いい温かさ。

それから鼻孔をくすぐる爽やかで落ちつく香り。

何もかもが気持ちいい。

「……すごい…」

「…そうか」

ぐっと更に強くなった腰にある手。

より密着したことで、堂本に包まれているようで落ちつく。

腰にある手の強さはそのままに、背中をゆるりと撫でられる。

でもそれが服の上からってのが、気にいらない。

もっと直接、感じたい。

着ている物を脱ごうとブレザーのボタンに手をかけていると、堂本に手を取られた。

「何してんだ…？」

「服、邪魔…脱ぎたい…」

「……こら、何言ってんだよ」

外したボタンを留められる。

「やだ！！」

「やだじゃ、ねぇよ」

「やだ、やだやだぁっ！！」

「こ、こらっ！」

堂本の首にガバッと腕を巻き付け、首元に嫌々と頭を押しつける。

優しい堂本は俺を引き離す事はしなくて、俺の背中をゆっくりと撫でてくれる。

宥められてるんだろうけど、気持ち良くってうっとりしちゃう。

「どうして、服を脱ぎたいんだ？」

優しく頭を撫でながら訊いてきた堂本をちらっと見て、答えなきゃだよなと口を開いた。

「だって、服、邪魔…」

「なんで、邪魔なんだ？」

堂本の困惑顔を見上げる。

「もっと、いっぱい、堂本を触りたい！」

真顔になって俺を凝視した堂本は、眉間に一本皺ができた。

「お前な…」

背中を撫でていた手が俺の顎にあてられ、ぐっと持ちあげられる。

「此処がどんな性癖のヤツらばっかりで、お前の前の前に居るのがどんな男なのか解ってるのか？」

スリッと頬を撫でた親指が俺の唇にふにふにと触れてくる。

「俺はな、どうでもいい奴なんかに番号もアドレスも教えねぇし、部屋に何て入れねぇ。ましてや肌なんて見せねぇし、触らせるなんてさせねぇ」

閉じていた口を開かされると触れていた指が咥内へ入ってきて、舌に押しつけられた。

「…んぅ…」

「はっ、小野田の舌は柔らかいな…」

確かめるように舌を撫でる堂本の指。

本来なら嫌なはずなのに、嫌じゃ無かった。

絡まる視線に熱を感じる。

くちゅ、くちゅりと親指で舌を弄り絡める。

時折、上顎や歯列を掠めるように撫でていく。

「……んっ、んっ、…んぁ…」

舌を弄られるせいで出てくる唾液が飲み込めない。

あ、もう、口の端から溢れていく。

そんな俺の痴態を嬉しそうに口の端を上げながら眺める堂本。

雄に見えるのは、俺の欲目か…？

なんとも言えない空気感の中、先ほど堂本が脱ぎソファーの背もたれに掛けられていた制服から聞き覚えのある電子音が鳴り響いた。

俺の咥内を親指で弄るままに、視線を顔ごと逸らされ、腰にあった手はそこから離れて携帯を握っていた。

携帯を耳にあて、会話を始めた堂本の顔は先ほどとは打って変わって、真剣のようにも見える真顔で、俺の事など眼中にも入って無かった。

なんか悔しさと言うか、ついさっきまで俺にあんなに熱をこもらせた視線を向けていたのに、俺だけの堂本だったの…に…。

携帯ごときに、堂本を取られるなんて、ものすっごく、嫌だ…！


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