まぁ、当たり前な反応で先輩は固まっている。

どれぐらい固まっているかと言うと、だいたい5分ほど。

その間、俺は耐えるしか無いので、そのまま俺も微動だにせず先輩を見つめ続けた。

そんな先輩がパチパチと瞼を動かずと確かめるようにポツリと呟いた。

「ぼく、…男だよ…?」

「知ってますよ」

パチパチとまた瞼が瞬く。

「女の子の話、してたよね?」

「正確には女の子の格好した先輩の話ですけど」

ジワリと先輩の頬が赤くなっていく。

「えっと、その…」

どうしたらいいのか分からないと言った感じではあるけど、決して嫌がられては無いなと頭の片隅で思わずにはいられないほど、先輩の反応が可愛い。

「先輩が好きだって言ってる俺は気持ち悪いですか?」

ちょっと態とらしく落ち込んだ風に言って見ると、おろおろし始めた先輩はブンブンと大げさに横に振ってくれる。

「そ、そんな事無いよ!」

頭を大きく横に振る先輩の可愛さと言ったら、半端無い。

「江崎君はカッコいいし優しいし、僕の事ちゃんと待ってくれるし、お菓子の話ししても嫌な顔しないで最後まで聞いてくれるし、好きな子の話とか聞いてるとその子の事、すごく羨ましくなるほど思ってて…あれ?、僕何言ってんだろ…あの、その…」

ぁあ、もう、これは期待せずにはいられないよな。

俺はうつむいた先輩の真っ赤になった頬を手で包みこんで顔を上げてもらう。

それから視線はしっかりと捕らえて放さない。

「先輩」

「は、はい!」

「先輩は俺が話してたその子が羨ましかったんですか?」

「……ぅ…」

「先輩…」

「ぅ、うらやましかったです…」

ふっと俺の頬が緩むのは仕方ない。

「どうして羨ましかったんですか?」

「そ、それは…」

言わないとダメなの?と、どうしても?と訴えてくるその瞳が可愛い。

だから俺はその先が欲しい。

「それは?」

「……江崎君に大切に思われてて、江崎君にそんなに思われてるその子、絶対に江崎君が好きになって江崎君が幸せにしてくれるんだろう、な…って…」

先輩の瞳が潤んでキラキラが増す。

「俺がそこの子の事、先輩に話すようになったのは、先輩が好きだったからです。男同士だったから嫌われたく無くて、でも諦めるなんて出来なくて、そんな時、先輩に教えてもらったアイスの店でその子を見かけたんです。先輩と同じですぐに好きになって、だから先輩を振り切るために先輩に話してたんです」

「江崎君…」

「結局、そこの子は先輩でしたけど…」

「…………」

「俺、先輩が好きです。どんな姿してても、先輩しか好きになれません」

先輩の頬から手を放して先輩に手を差し出す。

「俺の恋人になってください」

涙を溜めこんで潤む瞳はまっすぐに俺を見つめる。

「……僕でいいの?」

「先輩以外は無理です」

俺がそう言いきると、息を飲み込んだ先輩は一拍間をおくと、そろりと俺の差し出している手に先輩の手が重なった。

「ぼ、ぼくでよかったら、その、よ、よろしくお願いします…」

重なっていた先輩の手を握り締める。

「好きだ、藤弥」

握り締めた手を引っ張って倒れてきた藤弥の細い身体を抱き締める。

固まっていた藤弥はおずおずと俺に寄り添ってきて、遠慮がちに僕も好きですと言ってくれた。


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