次の恋に進もうと決めた俺は、まったく進めていなかった。
街で何度か先輩に教えてもらったカフェとかで見かけるんだけど、誰かと一緒に居たりとかで話しかけることはまったくできてなかった。
そんな事を先輩に話すようになって、優しく慰めてくれるうえに次こそガンバレって応援してくれる先輩にトキメク、俺。
進むどころか、後退している気がするのは俺だけかな?
学期末考査も終わって夏休みが目の前に迫ったある日、俺の運命は開いたと思う。
この頃の俺は先輩のおかげで本の楽しさを知ったせいか、ちょくちょく本屋で本探しをするようになった。
この日もなんかないかなとフラッと入って見ると、先輩の好きな作家さんの新刊が出てるのを見つけ思わず手を伸ばしたら、どこか見た事のある手のような白い手が俺の手に重なった。
隣を見ると、いつも街中だけで見ていたその娘がいて俺に謝ってた。
その声はいつも図書室で聞いてる声で、呆然と呟いていた。
「久遠先輩……?」
と。
弾かれように頭を上げて俺を見つめる遠目でしか見たことなかったその顔は、やっぱり可愛くて、でもやっぱり先輩で、背中を向けて逃げてく先輩を俺はやっぱり呆然と見送ることしかできなかった。
それから俺はどうやって家に帰ってきたのか覚えてない。
ぐるぐると本屋の出来事と先輩の事ばっかりが頭の中で駆け回っていて、ろくに寝られなかった。
時間が経つにしていてもたってもいられなくて、朝日が昇る前に起き出して、先輩の事ぱっかり考えて、遅刻ギリギリに登校して授業中も先輩の事ばっかり考えて、昼休みの終わりぐらいに覚悟を決めた。
都合のいい事にその日の放課後の当番は俺と先輩だった。
いつも通り俺よりも早く来ていて当番の仕事をやっていた。
俺を見る先輩のその瞳には怯えが見えて、いつもよりもそっと近寄ってしっかりと先輩の瞳を見て俺は当番の仕事が終わって話しましょうと持ちかける。
先輩は不安そうだけども周りを見て、わかったと首を縦に振ってくれた。
この学校の図書室には寄贈された花より○子をはじめとするはだしの○ンやヒ○ルの碁にスラム○ンクなどと言った教育になるだろうと思わる漫画本が結構の数置いてあって意外と利用者が多い。
今日も部活終わりの男子生徒数人が漫画本を数冊ずつ借りて行ったのを最後に、俺と先輩以外誰も居なくなった。
あと15分もすれば図書室を閉める時間になるからの静まり返った時間だ。
「江崎君…昨日の……」
カウンター内で俺の隣に座っている先輩が恐る恐ると俺を見ながら躊躇いがちに話しかけてきた。
キタと思った俺は先輩にきちんと向き合って言った。
「俺、先輩が好きですから誰にもしゃべりませんよ」
うつむきがちだった先輩の顔が驚きの表情と共に俺に向けられる。
「え、江崎君、しゃべらないって、その本当に…?」
好きの部分はスルーされてんなやっぱり。
「好きな人の可愛いところ、他の誰にも教えてくなんてありませんから」
「……ぇ…?」
そのキョトンとした顔、マジで可愛い。
あぁ、やっぱりあの娘の顔は先輩だな。
化粧無くしたら、まんま先輩の顔だよ。
「先輩に俺いつも話してましたよね、好きな子の話」
「う、うん…」
「その子、決まって先輩に教えてもらった店とか場所とかに居るんですよね。まぁ、女の子が好きなスポットですから重なってんだろうなと思ってたんですけど…」
「それって…」
呆然と俺を見てくる先輩に笑って、告げた。
「俺、先輩の事が好きです」
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