れ、連絡って、連絡ってどうしたらいい!?
堂本が夜にでもって言ってたよな…。
どうしたら、いいのか、さっぱりわかんねぇよ!!
…ちなみに、今現在、午後8時を少し回っております。
うぅ、今日の仕事は終わったし、出された課題も何時の間にか終わらせたみたいだし…(あの数学教師、30分もかからずに終わるような課題出してんじゃねぇよ!)。
…俺は男だ!
で、電話するだけだ……あ、いや、メールで、いやいやいや、って、俺の手震えすぎだろ!
アドレス、打ち込めねぇ…。
何回、失敗してんだよ、俺っ!
…メールはヤメだ。
ぉお、何とか番号押せた…ああ、もうやだ、…すーはーすーはー、よし!
いざ、電話、だ!
動悸が…もう通信中とか……、あーもう、ドキドキして息苦しいわ…。
『はい、もしもし』
うおっ、堂本!!
『小野田か?』
「は、はい、小野田です!」
『ぷっ、…何だ、緊張してんのか?』
わ、笑われた…。
「…いやだって…」
『ふっ、俺の部屋に来いよ』
「ぅへあ?」
えっ、ぇえっ!?
部屋って…、いいのか!?
『ぷっ、何だよその声。とにかく、二号館に来いよ』
「でも、本当にいいのか?」
『待ってる』
早く来いよと、鮮やかに切られ、俺は呆然だ…。
はっ、ど、どんな格好で行けばいいのかわかんねぇ?!
ぅ、もう、制服で…。
急いで私服から制服に着替えて新館の5号館から出て、足早に言われた二号館に向かった。
この学校は英国のパブリックスクールをモデルに作られたため、寮が何館かある。
開校当時からあるのが1号館から4号館で、一般公募を始めて作られたのが新設の5号館から8号館だ。
ちなみに分け方は4号館まで坊ちゃん連中で、5号館から一般人だ。
これまたちなみに4号館まで校舎同様の歴史ある煉瓦造りのお綺麗なお作りで、新設された5号館からは小洒落たマンションなかんじ。
俺が入ってる5号館は防音対策万全のキッチンバストイレ付のワンルームの一人部屋で俺みたいな学力特化の特待生が多く入ってる。
6号館は音楽や絵画などの芸術特待生用で造りは5号館とほぼ同じで、7・8号館はスポーツ特待生用の基本的に二人部屋になってる。
建った時代が若い分、校舎に少々離れてるのが難点だけど。
さて俺は難問にぶつかっている。
向かっている2号館はお坊ちゃん連中の聖域だ。
いや、普段いる校舎もまったく違う場所だし、会う時なんて移動教室ぐらいなもんだけどさ…。
まぁ、そんなわけで入りづらい…。
遠目でしか見たことない旧寮への入り口付近で、顔を顰めて突っ立ってる俺って不審者…。
いやいや、此処の制服(上にダウン着てるけど)着てんだから不審者はねぇよ。
行きたくないな、と考えつつ奥に見える豪奢な寮とは思えない建物を見つめる。
すると、肩にポンと…
「何、立ち止まってんだ?」
「……ど、堂本…!」
ビックリしたビックリした、ビックリした!!
いきなり後ろから出てくるってどんだけだ!
お化けが警備員の人かと思っただろが!
ドキドキが治まらなくて何も言えませんけどね。
「寒いから行くぞ」
手を握られて、引っ張られるまま堂本に連れて行かれる。
始めて入った旧寮の敷地は迷路だし、ワンダーランド気分。
迷い込んだアリスってすっげぇ、俺ものすっごく此処に居るの辛い。
帰りたいと切実に願い始めた俺の目の前に豪奢な洋館が立ちはだかっていらっしゃった。
進みたくないと無意識に歩幅が小さくなる。
それなのに堂本は文句も言わないで俺の速度に合わせてくれる。
見た目(多分、中身も)ライオン系の肉食獣を彷彿とさせるワイルド不良系イケメン坊っちゃん、所謂、勝ち組みのこの男は何処をどうしようがスマートなのか…。
あの馬鹿丸出しの生徒会メンバーじゃなくても、この男は僻みの対象だ。
己の器の小ささを思い知らされながら、俺はワンダーランドに入っていった。
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