今の生徒会になってこの学校の治安は軒並み悪くなった。
今の生徒会は顔だけで、何も出来はしない癖に問題はよく起こす厄介者ばかり…。
面倒事を起こすのは得意だが、収拾はまったくできない役立たず。
生徒会の屑どもが面倒事を起こす度に呼び出される俺たち風紀。
屑どもが面倒を起こす度に、感染するように屑どもの周りまで面倒を起こすようになった。
親衛隊などと呼ばれる阿呆共の集まりは些細なことで面倒を引き起こす。
崇拝している何々様にお声をかけられたからって調子に乗るなって呼び出して集団リンチ。
かと思えば、何々様の今宵のお相手は僕がするんだとかの争いで流血沙汰。
正直、お前ら全員、死ねよって本気で思う。
今日も、今先ほど親衛隊だと名乗ってる阿呆な見た目チワワに茶を引っかけられたところだ。
マジで殺してやろうかと、殺気を振りまいたおかげで早く収拾がついた。
馬鹿の集まりどものせいで出ばらってガランとした風紀委員会室で置いておいたシャツに溜息を吐きながら着替える。
空調が利いていても肌寒いと感じるこの季節、ブレザーは何とか無事だったのが救いだ。
インナー代わりに着ていた最近買ったばかりのTシャツに、茶色が浸みて変色しているのがイラつく。
去年の秋の終わりに代替わりした問題児ばかりの生徒会の面々に悪態をつきつつ、シャツを机に置く。
一瞬、このシャツを叩き付けたらスカッとするだろうなとか考えたが、物に当たり散らす癖を直している最中だったのを思い出して何とか思い留めて、溜息を吐くだけにした。
……、早く着替えるか…。
委員会室に置いておいたYシャツを手に取ったその瞬間、コンコンとノックの音がした。
ノックと言う事はこの委員では無く、しかも風紀に用事あると言う事だ。
はぁ、面倒事じゃないだろうなと、考えらながら応答を返す。
開いた扉から入ってきた人物に一瞬で顔を顰めたのはしょうがない。
「チッ、何だてめぇかよ。何の用だ」
気にくわねぇ生徒会の会長がそこに居るんだ、口が悪くなるのは仕方ねぇよ。
それにしてもコイツ何しに来やがった。
……なんか反応しねぇな。
「おい、何だてめぇ…」
何なんだコイツ、一向に動こうとしねぇ。
「おい…何なんだ「すげぇ…」よ…、は?」
俺の腹辺りを頬を薔薇色に染めキラキラとした瞳で見つめながら、思わず出ている感じの言葉。
「なぁ、ちょっとでいいからその腹筋、触らせてくんねぇ?」
……腹筋?
「なぁ、本当にちょっとでいいんだ! お願いだから触らして!」
そいつにずずいと近寄られて拝み倒されて、勢いに押されたまま。
「…ぁあ、別に…かまわない…」
そっと俺の腹に触れる白くて頼りなさそうな細い指。
確かめるように割れ目を辿る、柔らかさが解る指先。
すげぇと子供のように喜ぶ声とは対照的な、薔薇色の頬と恍惚と細められる目に、何故か背筋がゾクゾクする。
確かコイツの名前は小野田、琉輝だったか?
馬鹿な連中の代わりに生徒会の仕事をするためだけに生徒会に入れられた奨学生、だったはず…。
生徒会に入ったせいで気取ってんのかと思わせるスカした面してたもんだからな、小野田もあの馬鹿連中の同類だと勘違いしてた。
そうだなよな、一般家庭の小野田がボンボン連中に巻き込まれないようするために仮面としてあのスカした面をしてた訳か。
キョトンとした顔も、俺の顔を見て失敗したって顔も、オドオドしてる様さえも俺の何かをくすぐる。
俺が服着て腹筋隠すと残念そうな顔しやがって。
はぁ…、連絡先書いた紙渡して夜にでも連絡しろって言ったら、戸惑いつつもどこか嬉しそうにはにかむって、何だコイツ。
何だって言うんだよ、この凶悪に可愛い生き者。
ああ、もう、手に入れるしかねぇな…。
可愛過ぎんだろ、琉輝。
ヤバイな、俺…、ククッ…。
覚悟しろよ、可愛い琉輝。
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