俺が泣いてるうちにどこか知らない部屋に連れられてた。

不良さんは優しくて、ソファに下ろしたいことを言われたけど、離れたくなくていやいやって首を横に振ってると不良さんがソファに座って、俺を膝の上に乗せてくれた。

「手当するから服、脱いでもらってもイイ?」

「えっ!?」

やっと目が覚めた。

俺はその、人には言えない秘密があって、服を脱ぐのは一番ダメなんだ。

でも目の前の不良さんは真剣な顔して、湿布とか用意し始めた。

「あ、あの……」

「ん〜? どうしたの〜? 痣になったところに湿布貼るから、早く脱いでね」

「あの、その……服、脱がないと駄目ですか?」

不思議そうな顔して俺を見る不良さん。

「背中も腕も蹴られてるでしょ〜。服着てたらやり難いよ」

「そうですよね……その、あの、でも…」

「俺、怖いからヤダ?」

「そ、そんなことは……」

「本当に湿布貼るだけだから」

「……わかりました」

下さえ脱がなきゃ大丈夫だと思う。

恐る恐る服を脱いでいく。

最後のタンクトップをもう恥ずかしくて半泣きで脱いだ。

上半身裸になった俺を、じっと見る不良さんに気付かれたらどうしようと怯える。
何のリアクションも無い不良さんがとてつもなく怖い。

「痛そう……」

ぽつりと呟いた不良さんのその一言で、体の力が抜けていった。

そうだよね、痣になったところを見てたんだよね。

自意識過剰になり過ぎ。

不良さんは丁寧に、それこそ壊れ物のように優しく手当をされた。

ちょっとした痛みで声を漏らしても、体が痛みに揺れる度に、顔を覗き込まれて大丈夫?って訊いてくれた。

手当が終われば服をすぐに着せてくれた。
たぶん、最初に俺が嫌がったから、素早く、それこそ俺がもたもたしてる間に全部終わってた。

ちょっとぼけっとして目の前にいる不良さんのカッコいい顔を見てた。

すると不良さんは片眉を上げて、少し不機嫌そうになってた。

なんでだろう?

「君さ、ここら辺の子だよね」

「う、うん」

「だったら、ここら辺の夜の治安は良くないってことは知ってるよね?」

「はぃ……」

「君みたいな子なんてカモになり易いのは解るでしょ〜?」

知ってるよ、知ってるけど…!

「だって、ハゲ山が、掃除しろって……」

「何考えてんのかね、あのハゲ。仕方ないな〜、今度俺らが教育しとくか」

「え? な、なにが…?」

「ん〜? えっと、名前何?」

えっ!? 今。そう言えば助けてもらたったけど名乗ってないや。

「本多弥生です」

「弥生ね。俺は恭祐ね。呼び捨てでイイよ〜。弥生は同じ高校だよね、同じ制服だし。家ってどこ〜?」

「え!? えっと、丘の上の方にあるんだけど……」

「じゃ〜、あの道通らないと帰れないね。あとはかなりの遠回りの道になるだろうし」

「うん、そうなんだ」

「親とか呼べないの?」

「共働きだし、お母さんは運転できないから…」

「じゃ、俺の番号とか教えとくから次から遅くなる時は俺に連絡してよ。送るから」

「は……えぇっ!」

ごそごそと制服の上着から携帯を取り出した恭祐は、パパパと自分の携帯を操作して俺に携帯を出して交換しようって、押し切られるように交換した。

電話帳の中に柳元恭祐って名前がある。

「どうして……ここまで…」

「俺って一応ここら辺仕切ってるところの幹部なんだよね〜、面倒だけど。だから治安維持もお役目なの〜。それに弥生は特別ね!」

「………特別…」

「そ、特別。だから普通にメールしてね〜」

「え、え! えぇ!?」

いやあなた、さっき幹部とか言ってたのに、そんな気安くていいの!?

「ヤなの?」

「嫌じゃないけど、いいの俺がしても…?」

「イイよ〜。むしろしないと怒るよ。だから必ずすること〜」

不良なんて怖い人ばっかりだと思ってたけど、優しい人もいるんだ。

恭祐と仲良くなり始めた時、手に持ってた携帯が震えた。

「あ、お母さんだ」

誰だろうと見てみるとそこにはお母さんと表示してて、時間を見ると、門限を過ぎてる時間だった。

急かされるように急いで電話に出る。

『弥生、あんたもう門限過ぎてるわよ! 早く帰ってらっしゃい!』

「ご、ごめんなさい! 先生に資料室の掃除頼まれて……」

『それじゃ、仕方ないわね。今度からはそういう時には先に連絡しなさいね。心配するでしょう』

「うん、ごめんね、お母さん」

『早く帰ってくるのよ』

電話が終わって、帰ることを恭祐に言おうと思って恭祐を見ると、呆れた顔してた。

「な、なに?」

「弥生ってバカ? そんな状態で帰れるの? しかも一人で?」

「…ぁ…! か、帰れるもん!」

勢いのまま立ち上がった。

次の瞬間、激痛が主に足から来た。

「はぁ、仕方ないな〜」

痛みに悶絶してた俺を軽々と抱き上げた恭祐に道を訊かれながら家まで帰った。
俺にあまり振動が無いようにゆっくりと歩いてくれる恭祐は、すっごくカッコよかった。

帰ったら帰ったで俺の惨状を見たお母さんと皐月に睨まれてたけど、俺が誤解を解けば現金なもので面食いの二人はすっかり恭祐を好きになったようで、ちょっとムカつく。

でも優しい恭祐はその日は俺が寝るまでいてくれて、俺は安心して眠れた。


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