すごい音がしたと思ったら、俺は蹴られなくなった。

その代わりに俺を今まで罵倒していた声が呻いているのが聞こえる。

何が起きたのか、恐る恐る瞼を開けて、腕を退かしてみる。

そこには金に近いほど色を抜いている茶髪の、俺をカツアゲしてたやつらなんかよりも断然カッコいい不良さんがそいつらを瞬く間に倒していた。

ピクリとも動かなくなった三人をそのままに、どこかに電話をかけたカッコいい不良さんは電話が終わるとこっちに振り返って俺の所に来た。

しゃがみこんで俺の顔を覗き込むから、暗くても整っている顔が分かる。

「大丈夫〜?」

ゆっくりと話しかけてくるその人の声がすごく優しく聞こえる。

「起きれる〜? 無理そ〜? 立つのは無理かな〜?」

頭を撫でてくれる不良さん。

確かめるように蹴られた所を丁寧な手つきで触られる。

「ほっぺたも腫れちゃってるね〜。ん〜、とりあえず運ぶか〜」

何を決めたのか良く分からないけど、俺のカバンにぐちゃぐちゃにされた教科書とかを入れてくれて、しかも取られた財布と中身も一緒に入れてくれた。

「じゃ〜、抱っこするよ〜。痛いけど、我慢してね〜」

背中と膝裏に腕を回されて、横抱きにされる。

気を使ってくれたのか、そこまで痛くなかった。

不良さんのするままに身体を預けていて、頭が丁度胸のあたりで不良さんの鼓動が聞こえる。

不良さんの体温が温かくて冷たくなってた体が温まって、力が抜けていく。

じわじわと滲んでくる涙のせいで視界が悪い。

無意識に俺は何かにしがみ付いた。
布に涙が染み込んでいるのが、わかるけど、何かにしがみ付かないと怖い。

それが不良さんの制服だったのに、不良さんは何も言わなかった。


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