自転車で三十分ほどかかる慶くんの家に到着すると、いつもの場所に自転車を留めて慶くん家のチャイムを鳴らす。

暫くして勢い良く開いた玄関の扉から慶くんが出てきた。

「遅いよ! 先に食べちゃおうかと思ったじゃん!」

「ごめん、ちょっとお母さんに捕まちゃって」

「それじゃ、仕方ないから許してあげる。おばさんにはいつも綺麗なバラ貰ってるから」

「よかった。そのお母さんから、はい」

慶くんに黄色いバラの花束を差し出し、受け取ってもらう。

「まだ咲き初めたばっかりだって」

受け取った慶くんは途端に笑顔になってくれる。

可愛い顔立ちの慶くんが笑うとすっごく可愛いから、俺は慶くんの笑顔を見るのが大好きだ。

「わぁ、今日は黄色のバラなんだ。おばさんにありがとうって言っておいて」

「うん」

それから慶くんのお家に上げてもらって、一人で慶くんの部屋に向かう。
慶くんは花を活けてくるからと、先に部屋に行ってと言われた。
何度も通い慣れている慶くんの部屋まで行くと、甘い良い匂いが香ってくる。

「わぁ〜! いい匂い〜」

引き寄せられるように慶くんの部屋のドアを開けて、チョコレートのいい匂いが充満している部屋に入った。

テーブルの上にフォンデュ用の器に入っている湯気を上げて蕩けているチョコレートと瑞々しいイチゴやオレンジと言った果物たちにワクワクとドキドキが止まらない。

テーブルの前にちょこんと座りこんでそれらを眺める。
慶くんはまだかなとか考えながら飽きることなく眺める俺を、飲み物を持ってやってきた慶くんは、ふふんと自慢げに胸をそらした。

「今日は父さんからちょっといい白ワインを貰って作ったんだ! 味見したソレ、美味かった〜」

「ずるい! 俺も食べた〜い」

「じゃ、早速食べよ!」

さっと渡された皿と二股にわかれた串を渡される。

「やっぱ、最初はイチゴからだよな〜」

サクッと大ぶりのイチゴに串を刺してチョコフォンデュの中につける慶くんを見習って俺もイチゴを刺してチョコにつける。

チョコが熱いから気をつけてよっと言われ、少し冷ましてからガブリと我慢できずにかぶりつく。

口の中に広がるイチゴの甘酸っぱい果汁とほろ苦いけど甘さが有るチョコのハーモニーが広がって無意識に美味しいと言っていた。

「美味し過ぎるよ、慶くん! もうイチゴはもちろんだけど、チョコの甘さ加減とほろ苦さが堪んないよ! もう、慶くんってば天才!」

「褒め過ぎ」

ちょっと俺から視線を外しながら照れながら言われても、可愛いだけだから!


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