「あ、また苗字さん落ちてる」
「え!またッスか」
「あんなとこで寝てたら危ないだろう」
「なっとらんな」
「仁王くん、落ちてましたね」
「ああ、落ちてたの」
「げぇっまたアイツかよ…狙ってんじゃねーの?」
「苗字はそんな器用なことできねぇよ」
部活も終わりさあ帰ろうかってところでまた苗字さんを発見した。あの子本当に大丈夫?俺苗字さんをみてこれからは健康には気をつけようと思ったもの。
「わり、俺苗字拾ってくわ」
手慣れた様子で苗字さんを担ごうとしているジャッカルを見ててちょっと羨ましく思った。俺だって苗字さんと話してみたい。
あまり普段は女の子には自分から話にはいかないんだけど(ほら、俺人気者だから?)面白そうじゃない?この子。だからジャッカルに俺が担ぐって、申し出たら顔を引きつらせながら大丈夫かよって…失礼だな、女の子1人どころか真田だって担げるわ!担いだこと無いけど。
「意外と重いぞ?」
「聞こえてるよジャッカル」
「あ、おはよう苗字さん。俺が担ぐけどいいよね?」
「え…折れない?てかもう歩くよ私歩けるよ」
「失礼だなどいつもこいつも」
「それなら女の子に担ぐとかないわ…せめて背負えよ」
赤也なんて引きずってたからね?という言葉を飲み込んで苗字さんを背負うことにした。よっこいしょ、なんてちょっと年寄りくさい掛け声を出しながら。
苗字さんもあまり抵抗しないのを見ると満更でもないのか段々面倒臭くなってきたかのどちらかだろう。おそらく後者。
「本当だ、苗字さん以外と重い」
「おい降ろせ」
「苗字先輩暴れると落ちるッスよ!」
「助けて!糸目くん!」
「おい精市、落とせ」
「あああごめんなさい助けてジャッカル!!!」
「な?アホっぽいだろ、苗字」
「うんアホっぽい」
「じゃあちょっと苗字回収してくるわ」
「俺も行く!」
「…なんかつまらんのぅ」
「子供じゃないんですから拗ねないでくださいよ」
「酷いぜよ」
暴れる苗字さんを無理やり押さえ込むと彼女は燃料が切れたかのように大人しくなった。そんな様子をみてジャッカルは苦笑いをしながら眺めていて、本当に保護者みたいだな。って思ったけど保護者じゃなくて保父さんだった。