目が覚めたら保健室に居たんだけどもまあいつも通りなんで気にしない方向で。
たぶんクラスの子あたりが運んでくれたんだろう。後でお礼言っとこ。
「あれ、もしかしてもう授業終わり?」
「仁王くんなにかあったんですか?やけにテンションが高いようですが…」
わかりにくい変化だが仁王くんは放課後からやけにテンションが高い。
私が言うんだからまず間違いはないでしょう。
仁王くんは着替えつつ私をチラッと見やると、口元に僅かに笑みを浮かべた。ああ、なにか面白いことでもあったのか。
「柳生、苗字さんの噂は本当かもしれん」
「はい?」
「さっき気まぐれで苗字さんを保健室まで運んでやったら帰り道に百円拾った」
「それはまた、小さな幸運ですね」
「まぐれだとしてもどうにも面白くてな」
「良かったですね」
聞けば仁王くんは苗字さんのことに興味が湧いたようで、女性に多少の煩わしさを感じていて自分からはあまり近寄らないような人なのに。
まあでもこの様子だと面白い玩具を見つけた、といったところでしょう。そのうち興味は薄れていくのが目に見えている。
「帰りも倒れてたら拾っていくかの」
「珍しくお気に入りじゃないですか」
「くくく」
仁王くんが楽しそうでなによりです。
外からは運動部の元気な声が聞こえてくるからもう部活動の時間なのだろう。
私もそろそろ帰らないと、また途中で寝たりしたら家に着くのは夜が明けてからになってしまう。
あーあ、途中で誰か拾ってくれたらいいのに。
できればいい匂いの女の子がいいけど引きずられるのは目に見えている(あれ割と痛いんだよ)からマッチョで私を軽々抱えてくれる人で。