あれから四日、おおよその荷造りは終わっていた。
しかし未だに新しい住居を見つけられずにいる。
そりゃあ今の場所を見つけるのにもだいぶ苦労したしすんなりと見つかるとは思ってはいなかったけど、期限はあと三日。本格的にやばい。流石に異国の地で野宿するのは少し抵抗がある。私も女の子だしね。
ほとんど段ボールの部屋に閉じこもっていても仕方がないので私は少し家を探しがてら散歩に出ることにした。
「この家もあと三日かあ…」
少し寂しいけど悩んでいてもしょうがない。
私は家の鍵をかけて自転車に跨った。
この街も見慣れたものでほとんどの地形は把握しているつもりだ。
ここから少し先に勤め先の飲食店があるから、新しい住居もここの近くがいいなあ。まあ、最悪勤め先を辞めてもいいからとりあえず今は家だ。家はどこだ。
しばらくフラフラとしていると自転車でも流石に疲れる。私は近くにあった落ち着いた雰囲気のカフェを選び中に入っていった。
内装は中々お洒落で店主のセンスが光っている。こんなところがあったのか、もっと早くに見つければよかったと若干後悔しながらも空いている席に着いた。
メニューを手に取れば写真付きのケーキやコーヒー、紅茶などが乗っていてどれも美味しそうだった。色々と目移りしてしまうために中々決めあぐねていたところに店の奥から初老の男性が出てきてこちらに顔をやった。
「おや。はじめましてだね、素敵なお嬢さん」
そこはやはりというかなんというか、イタリア人。
少し茶目っ気のある笑顔でこちらに声をかける姿は素敵である。
「はじめまして、この街にこんな素敵なところがあるなんて知らなかったわ」
「ふふ、そういっていただけると嬉しいよ。さあ、ご注文は何にしましょう?」
「どれも美味しそうで迷っているの。何かお勧めはあるかしら?」
ああそれなら、と男性はこちらに歩み寄りメニューに手をやった。
彼の手の先には可愛らしいケーキの写真。果物がのっていてこれも美味しそうだ。
「こちらはどうでしょう、季節の果物をふんだんに使ったケーキです」
「素敵!じゃあこれとコーヒーを頂ける?」
「かしこまりました。お砂糖とミルクはいかがいたしましよう?」
「いいえ、ありがとう」
それだけ伝えると男性はまた微笑んで店の奥へと消えていった。
それを見届けると扉の開いたことを知らせるベルの音が聞こえてきて、何気なくそちらに顔を向けた、ら。そこには四日ぶりの幼馴染がおそらく私と同じであろう表情を浮かべてこちらを見ていた。
「名前…また、会ったね」
「ははは…偶然ね」