あの後綱吉と、沢田と別れてそれぞれ帰路についた。もう、二度と会わないことを願おう、次に会ったらどんな顔していいかわからないから。

「格好良くなってたな…」

そう、本当に格好良くなった。
柔らかな髪とその瞳は相変わらずだったけど、見違える程大人びていて、寂しそうに見えた。
笑っちゃう。沢田の家族はそのことに気がついているのだろうか。

気がつけば空は薄く紺色が広がっていた。
時が流れるのは早い。
本当に、早い。
光陰矢の如しとはいうがこれはもう矢どころの速さではないと思う。

「…なんちゃって。帰るか」





こっちに来て長い間お世話になっていた小さなアパートに帰ろうとした、ら。
大家さんが出てきてとても信じたくないことを言ってくれた。

「あら、ごめんねぇ名前ちゃん…悪いんだけどあと一週間の内に出て行ってくれないかしら」

「えっ…な、なんでですか!?」

「本当にごめんなさいねぇ」

ほほほ、とあんまり申し訳なさそうじゃない大家さんは理由も言わず去っていった。
頭上でカラスに馬鹿にされた。

こうして私は一週間後には家無き子になるわけである。

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