中学を卒業して何年か経った。

沢田とは連絡をとっていない。家にも行っていない。最後に話したのはいつだっけ。

私は二十歳になった年に料理の勉強を理由にイタリアに住むようになった。街も人も本当に素敵で、ここに来たことは後悔していない。

ただ、一つ言うならば

「名前…?」

彼に会ったことだろう。



場所を変えて2人で話すことになった。馴染み深い喫茶店に彼を連れてきた。

「名前とこうやって話すの何年ぶりかな」

「ふふ…さあ?」

「イタリアで何してるの?」

「なんだっていいじゃない」

つい冷たく答えてしまうのは、きっと私自身がまだ彼を許せていないから。ずっと子供みたいに1人で拗ねてるの。

「そう、だね」

「…いい人はいるの?」

訊いてしまった。
私はまだ、あの約束に縋ろうとしているのか。

「一応ね」

ああ、覚えてる訳がないものね。

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