また、朝が来た。
昨日は名前のおかげで久しぶりにゆっくりと眠りについた。
なんでも名前はついこの間イタリアから日本に渡ってきたらしく今住んでいるこの立派なマンションの一室は最近借りたものらしい。部屋には生活できる必要最低限の物しか置いてなくて少し寂しいが名前はあんまり気にしてないようだ。物に執着がないのかもしれない。置いてある家具は新品でどれも高そうに見える。ベットなんてまるでどこかの王様が使うような大きなキングサイズで、恥ずかしながらも名前と一緒にそこで眠った。
本当に恥ずかしくて出来る限り離れていたのだけど名前はそれを許さず、俺を力いっぱい抱きしめていた。その内に絶対に俺を離さないでいてくれる名前に俺は安心し、そのまま目を閉じた。直に伝わる体温の温かさを感じながら。
そして今、こんな唐突な話を名前から持ちかけられた。
「ねぇ綱吉ー?」
「なに、どうかした?」
「私ねー綱吉の学校に通うことにしたよー」
「はぁ?」
突然何を言い出すのかと思えば。
そんなこと俺が許すわけがないだろ。ただでさえ情けないのに、学校での姿なんて見せれるわけがない。きっと彼女は悲しむだろう。俺が、名前を悲しませてしまうのだ。
名前にこれ以上心配をかけさせるわけにはいかない。
「つ、ツナくん顔怖いよ」
「怖くないよ。聞いて名前、俺はね?名前のことが心配でしょうがないんだよ?そんな俺の気持ちを踏み躙る気?」
「で、でも、私綱吉を守るって…」
「大丈夫」
大丈夫だから、と言って笑いかけてやると、名前はやっぱりまだ不満なのか納得のいかないような顔をして渋々頷いて見せた。
でもこの時俺のお得意の超直感という奴は確かに警報を鳴らしていた。
「ところでさぁ綱吉」
「なに?」
「あの家、住んでるの綱吉と奈々さんだけじゃないよね」
「!良く分かったね」
「(私と綱吉の愛の巣に侵入する鼠野郎は)誰かな」
「(なんか副音声聞こえた!?)家庭教師とその愛人と…」
「へぇ…女?」
「名前なんか怖いよ!?」
そんな独占欲の強い彼女に確かに救われている俺がいるのだった。
さあ、学校に行こうかな。
俺はまた頑張れる気がするのだ。