「いらっしゃいませー」
「あれ、ランピ―さん?」
「名前ちゃんじゃん」
自転車を買いに来たらお店にランピ―さんがいた。
だいぶ苦手意識は薄れてきてはいるのだけれどやっぱり一対一で話すのは若干怖い。
第一印象が悪かったというのもあるけどいかんせん背が高いので視覚的な恐怖を感じる。怖い。小心者でごめんなさい。
ていうかランピ―さん服屋で働いてなかった?
「ああ、またクビになったの」
「口に出てました?」
「顔に書いてあったよー」
「ちょっと顔洗ってきますね!」
自分的に自然な流れで退室しようとしたけどランピ―さんの間延びしたなんとなくやる気を損なわせるような声でちょっと待ってよー、と呼び止められあえなく断念。
どうしよう、逃げたい。
「何か買いに来たんじゃないの?」
「アッ自転車が欲しいなって…」
「わかったー何色がいい?」
「んー…任せます。予算はこのくらいで…」
「はいはーい、ちょっと待っててね」
そう言い残してランピ―さんは店の奥へと消えていった。
…なんか鈍い音聞こえてきたけど大丈夫かな…あの人なんか鈍そうだし…髪切ってて人殺っちゃう様な人だし…。
いつ殺されるかわからない(あるいは死んでるかの)状況の中1人ドキドキしながらランピ―さんを待っていた。
残念ながらランピ―さんが歩く死亡フラグということはラッセルさんから既に情報を得ている。
こんな余計な情報さえなければ幾分かはまだ安心できたのに…!
「お待たせー、黒でいい?」
「お、おお…やっぱりセンスいいな…じゃあこれください」
やはりというかなんというか、たんこぶこさえて戻ってきたランピ―さんのセンスはやっぱりいいと思う。なかなか格好いい自転車だ。
まだ苦手ではあるものの私の中での彼への好感度は徐々に上がっていっているのを感じる。我ながら単純な奴だ。
お金を支払いランピ―さんに別れを告げる。何事もなく生還できたことを、嬉しく思います…!
上機嫌で新品の自転車に跨りすいすいと道を進んでいくと前方に男の子がうずくまっているのが見えた。
何かあっては大変だと思い少し速度を上げて男の子の元へと向かう。
「うぉーい!少年、大丈夫か!?」
ゆっくりと顔を上げた少年はこれまた美少年でこの街の美形率に圧倒されながらも少年の口が開くのを待つ。
「お…ほ…い…」
「え?」
「お菓子…ほしい…」