「なあ…離し」
「いや!」
静かな住宅地、といっても人などここで言い争っている男女2人しかいないが
いや、争っているというのも語弊がある。それはとても一方的な争いだった。
「サイタマさんと離れたくないの!」
「いや、あの」
「サイタマさんが行く必要なんてない!他のヒーローが行くよ!」
「名前さーん…」
「大丈夫もし今ここに怪人が来ても私がサイタマさんを守ってあげる傷一つつけさせない」
「(だめだ、きいてない)」
女の方は男の方の腰に捕まって離れないでいる。だんだん鼻息が荒くなってきていることに男は気がついてついに観念してしまった…と思いきや。
「名前、大丈夫だから帰ろ」
「サイタマさん…!」
男はやんわりと腰に回る手をほどき
「じゃ、そういうことで」
逃げ出した。
女はしばらく呆気にとられてたかと思うと鬼のような形相で叫んだ。
「世界と私どっちが大事なの!!!」