*GL


「相馬さん、隣いい?」

「ふふ、どうぞ」

遠慮がちに訊いてきた彼女は何故か中学へ上がると同時に私とずっと一緒にいた。もちろん、私の悪い噂も聞いていることだろう。でも彼女はずっと一緒にいた。


「みょうじさん、なにか用かしら」


用なんてないことも、もちろん知っている。


「ううん、ただ相馬さんの側にいたかったから」


望んでいた返答が帰ってきて思わず口元が歪んでしまう。嬉しい、という感情が胸いっぱいに広がり温かくなる。


「そう」


「うん」







頬にあたたかな雫が伝った。それが自分のものではないと理解するのに時間はかからなかった。それは、私を優しく抱きしめてくれている黒髪の美しい女の子の悲しそうな姿をぼやけて薄れて見えなくなる私の目が捉えたから。


「なまえ…」

「そ、うまさ…ん?」

「ええ、そうよ」

「なかないで」

「なまえ、なまえ!」


ああ、やっぱり可愛いな、相馬さん。こんなに素敵な人をもう見れなくなるのはとても残念だな。
そう思うと撃たれたお腹よりも胸がキュウっと痛くなった。

きっとそれは、私が相馬さんに恋をしていたから。

本当は墓場までこの気持ちは持って行くつもりだった。でももう墓場にもいけなさそうだし、なにより私がつらいから。


「み、つこちゃ」

「…なに」

「すき」

「え、」

「私、光子ちゃんの、こと」


息がし辛くて苦しい。今まで自分がどうやって呼吸してきたかさえも思い出せない。


「ずっと、ずっと、すきだった」

「なまえ…!」

「ごめんね」


女の子が好きなんて、気持ち悪いよね。
私の意識はゆっくりと遠のいていく。

「なまえ…?なまえッ!?なんで、なんでなのよ…なんであやまるのよ馬鹿ぁ!」

唇に温かいものが触れた。

「ありがとう…ありがとうなまえ、私あなたのこと…」

もうなにも聞こえない。

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