「ちょいと三村さん」
「なんだいみょうじさん」
「あんたなんで私の部屋にいるんだね」
「さぁねぇ」
そう、この三村信史という男は何故か私が家に帰るといつも我が物で私の部屋に居座っているのだ。しかもだいたいベッドに寝転んで私の机から勝手に出した雑誌を勝手に読んでいる。
乙女の机を漁るのはどうかと思うの私。いくら顔がいいからって調子のんなよ。
「誰が乙女だ、誰が」
「おい、お前の目の前にいるだろ。おい顔を逸らすなおい聞いてんのか」
「なーんにも聞こえない」
「くそったれ」
女の子がそんな汚い言葉使いすんなー、って誰のせいだ誰の。
この男と仲良くなったのは小学校の頃だったが、こいつはモテるモテるで小学生ながらかなりマセていた。彼のおじさんの影響もあるんだろうけど。三村がモテるお陰で私もだいぶ被害を受けた。
まあ、嫉妬だ。長い間女子の嫉妬を受け、嫌がらせを受け、三村と連んでたらもうそりゃ口悪くなるわな。
「おいおいそりゃないぜ、その口の悪さはみょうじの天性のもんだろ」
「なんだと」
「だいたい俺みたいな美男子と長い間付き合いがあることを喜べよ」
「じゃあお前も私みたいな美少女と長い間付き合いがあることを喜べ」
「美少女…ブハッ」
「てんめぇ…」
軽口を叩き合えるこんな日常が、私は大好きで、大切で、宝物だった。
だから私は、この大切な宝物を奪った国の大人を、絶対に許すことはないだろう。