※唐突に終わります。

教室の窓から見える彼女は何故だかいつも泣いていた。
いつもいつも、一人で泣きながら木の下に立っている。
僕も最初は気にならなかったけど、ある日ふと
彼女は何がそんなに悲しいのだろう。と思った。
考え出してからは止まらなかった。
ペットが死んだ?いじめにあっている?もしかして病気なのかな?
どれも僕には関係無いけど、何故だか凄く気になり出した。

彼女と話がしてみたい。

そう思った夜、きっともう彼女はいないだろうと思いつつも
寝ている三郎を起こさないようにこっそりと、部屋を抜け出した。
その時の僕には迷うなんて選択肢はなかった。

学園の夜は鍛錬や委員会などで起きている生徒がいるせいかところどころから声が聞こえる。
でも、彼女がいつもいる所へ足を向けると、その音もだんだんと小さくなっていき
ついには聞こえなくなってしまった。
代わりに聞こえて来たのは女のすすり泣く声。

あ、彼女だ。

どう考えても可笑しいに決まっている。
女がこんな夜遅くまでこんなところで泣いている筈がない。
それも僕が見る度彼女はいたので一日中ということになる。
不気味だった。後から考えるとそう思う。

でも何故だか僕は迷わず彼女の元へ歩み寄り、声を掛けた。

「何がそんなに悲しいの?」






私はここの学園の生徒だ。
いや、生徒だったと言った方が正しいかもしれない。
というのも、とっくの昔に私は死んでいるからだ。
私の死体は未だに発見されてはいない。
それもそうだ、私は絶対発見されないような私だけの秘密の場所で死んだのだから。

死因?

私の死んだ理由なんてばかばかしくて思い出したくもない。
まあいってしまえば自殺だ。自分で自分を殺したのだ。
あの頃の私は頭が可笑しかったとしか思えない。
死んでから初めて冷静になって考えた。
なんで、私、死んだの?
何の不満もなかった筈だ。普通に楽しかった筈なのだ。
なのに、どうして。

死というものを、生前の私は理解していなかった。

成仏できればいいものの何故だか私はこの地に留まっている。
仲間はみんな卒業してしまい私は焦った。でも焦る必要なんてなかった。

私死んでるから。

なんであんなことしてしまったんだろう。
誰か、私に気がついて。

後悔と悲しさと苛立ちからか私は涙が止まらなかった。






「・・・私が、見えるの?」

彼女は泣き顔を僕に向けてその目を大きく開かせた。
どれだけ泣いていたのだろう。
目は赤く腫れ上がり、頬には涙の跡がついていた。

「見えるってどういうこと?」

「だって私、死んでるのに」

「君が死んでるだって?そんな馬鹿な。じゃあ君は幽霊だっていうのかい」

「そう、なんじゃ、ないかな?」

とても信じられないことを言っているが
そんなこと僕にはどうだって良かった。
ずっと、訊きたかったことがあるのだから。

「ねぇ、質問に答えて」

「え」

「なにが、そんなに悲しいの?」

彼女は黙ってしまった。
そして、困惑したような顔をして口を開いた。

「わからないの」

わからない?わからないのにずっと泣いている?

「なにに悲しんでいるのか、もうわからないの」

「・・・そう」

「うん・・・」

「雷蔵」

「えっ?」

「僕の名前。君は?」

「私は、なまえっていうの」

「そっか、よろしくなまえ。また君に会いにくるよ」

「え」

何か言いたげな彼女を無視して僕は長屋に戻って行った。
彼女から離れるにつれて、元々聞こえていた生徒の声はだんだんと大きくなっていく。

何故だか分からないけど、僕はまたなまえと喋ることを凄く楽しみにしてその日は眠りについた。


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長編にしようとしていた作品。
でも終わりが見えないので断念。

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