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三角関係
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次の日の朝、レナは寒さで目を覚ました。
小さな窓から見える景色は、ほとんど雪で覆われている。
どうりで寒いわけだ。
ジニーの部屋にフラーと一緒に詰め込まれていたレナは、寝付くまでずっと寒い狭いと文句を言っていたフラーに毛布をかけ、居間に下りて暖炉に薪を入れた。


(まさか家の中で寝袋を使う日が来るとは思わなかったな)


昨晩は、最後の最後に部屋割りで揉めたのだ。
ハリーがロンの屋根裏部屋、ビルがフレッドとジョージの部屋、というところまではよかったのだが、ビルの部屋にリーマスとレナが充てられたところで待ったがかかった。

フラーはビルと一緒がいいと言い、リーマスの行き場がなくなるからダメだとモリーに言われると、ジニーがレナは女の子なんだから自分たちと一緒の部屋にするべきだと主張した。
あとから聞いた話だと、フラーと2人きりがどうしても嫌だったらしい。
モリーは人数と部屋の広さを考慮するべきだと言ったが、リーマスが丁重にお断りをしたことでレナはジニーの部屋へ行くことになり、じゃんけんで負けて床で寝るはめになった。


(風邪を引いたらリーマスのせいにしてやるんだから)


くしゃみをしたレナは、鍋でお湯を沸かし、起きてきたモリーと一緒に朝食の準備に取り掛かった。


「どうしてリーマスは嫌がったのかしらね?」
『あー、んー、一応気を使ってくれてるんじゃないかな?』
「同じ家に住んでいるのに?」
『さすがに寝るところは別から――』
「そうなの?1度も?」
『えー、まあ、はい』


なぜかモリーはレナとリーマスの様子を詳しく聞きたがった。
しかも相槌の打ち方がやけに嬉しそうだ。
その理由は朝食のときにわかった。


「あのかわいいトンクスを招待したのだけど、でも来ないのよ」


ロンがドジをしたことがきっかけで、トンクスの名前が出たときだ。
モリーはやけに力の入った言い方で“かわいいトンクス”と言った。


「リーマス、最近あの娘と話をした?」
「いや、私は誰ともあまり接触していない」


リーマスの返答を聞いてレナは驚いた。
3日前に、三本の箒で顔を合わせているではないか。
しかも、マダム・ロスメルタが戻ってくるまでの間の15分ほど、2人きりで会話をしていたはずだ。
リーマスは眉根を寄せるレナに気づかないふりをして、モリーと話を続けた。


「トンクスには一緒に過ごす家族がいるんだから、来なくても不思議ではない」
「私には、あの娘が1人でクリスマスを過ごすつもりだという気がしますけどね」


モリーの言い方は、ちょっと嫌味っぽかった。
まるでトンクスがここに来ないのはリーマスのせいだとでも言わんばかりだ。


(そっか、モリーは知ってるんだ)


レナは納得した。
モリーはトンクスがリーマスに想いを寄せていることを知っていて、なおかつトンクスの味方に違いない。
おそらく振られた話も聞いているのだろう。
だからトンクスを振ったリーマスに怒ったような態度を取り、レナとリーマスの親密度がそれほど高くないと知って喜んだのだ。


(疑われるほど仲良く見えるのは嬉しいんだけどね……)


当の本人が意識してくれないことには始まらない。
レナはまるで他人事のような顔をして七面鳥にナイフを入れているリーマスを見た。


「トンクスと言えば、守護霊が変化したんだ」


思い出したかのようにハリーが言い、リーマスの手がピクリと反応した。
でもそれは本当にほんの一瞬のことで、レナが瞬きを終えたときには、フォークが七面鳥をぶすりと刺していた。


「守護霊が変わることなんてあるの?」
「ときにはね……」


リーマスは何かを考え込むようにゆっくり七面鳥を噛んでいた。
喉仏が上下に動いたとき――またしても一瞬の出来事だったが――目が合った気がした。


「強い衝撃とか、精神的な動揺とか……」
「脚が4本あって、大きかった……あれ?もしかしてあれって――」


ハリーには思い当たる節があったのか、話の途中でハッとした顔を見せた。
しかし、それがなんだったのか、レナが聞くことはできなかった。
家族と仲違いしていたパーシーが魔法省の人を連れてやってきたことで、朝食の席は急にあわただしくなり、そのままお開きになったのだ。


(強い、動揺……)


リーマスの説明は、レナの心に大きなしこりを残した。
ハリーの言い方から察するに、守護霊が変化することは珍しいことなのだろう。
にもかかわらず、トンクスの守護霊は変化した。
見た目も性格も別人のようになってしまった。


(トンクスは本気なんだ……)


自分はどうだろうか。
トンクスよりも強い想いがあると言える自信はなかった。


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