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憂鬱な狼(3)
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別れへのカウントダウンは、思いがけず0になる直前に止まった。
その知らせを受けたとき、誰もが驚き顔色を変えたが、リーマスはそれらの比じゃないくらいに青ざめた。


「ダンブルドアが学校を追われた……?」
「ああ。洗脳と扇動のかどで、アズカバン行きの判定が下った。明日の朝刊にも載るだろう」


キングズリーは突然魔法大臣がホグワーツに乗り込むに至った経緯を話した。
ダンブルドア軍団の結成が、以前から騒がれていたクーデターの疑いを確実なものにしたとのことだった。
非合法のタイムターナー及びポートキーの所持も罪状の1つになっていると聞き、頭を殴られたような気分になる。


「キングズリー、君はその場にいたんだろう?どうにかできなかったのか?」
「ダンブルドアがどうにもできなかったことを、私がどうにかできるはずがない」


アーサーに言われ、キングズリーは首を横に振った。
無念そうではあったが、その顔に絶望はなかった。


「しかしダンブルドアはうまく逃げおおせた。きっとそのうちここにも来てくださる。そのときにまた指示を仰ごう」
「子ども達はどうなるの?」
「きっとマクゴナガルがうまくやってくれるわ」


倒れそうなモリーを、トンクスが支えて励ます。
ね、と同意を求められ、リーマスは頷いたが、心ここにあらずの状態だった。
なぜ、よりにもよって今なんだと、魔法省を恨まずにはいられない。

会議が終わり、解散になってからも、リーマスはその場を動けずにいた。
手を口に当て、まばたきもせずにどこか1点を見つめている。
モリーをなだめ終えたトンクスが、顔を覗き込んだ。


「どうしたのリーマス、気になることでもあった?」
「ああ、いや、なんでもない。……キングズリー、ダンブルドアはどのくらいで戻れるだろうか」
「わからない。待つしかない」
「学校は実質魔法省に掌握されたということになるんだろ?」
「そうなる」
「忍び込むことは可能だろうか」
「忍び込む?何を考えているんだ?」
「いや、なんでもない」


リーマスは軽く笑い、卓上にあったワインをゴブレットに並々と注いでいっきに飲んだ。
満月の3日前だったこともあり、リーマスの奇妙な反応を気にする騎士団員はいなかった。
それぞれが不安を口にしながら、外に出て行く。

シリウスだけが訳知り顔で、リーマスの肩を叩いていった。
言葉がかけられることはなかったが、ニヤっとしていたので何を言わんとしているのかは伝わってきた。


(きっと大丈夫だ)


ダンブルドアなら、なんとかしてくれる。
こうなる可能性も考えて策を投じてくれているはずだ。
しかし、もしも、10日に洋箪笥を使うことができなかったら――。


(いや、大丈夫だ。大丈夫。いくらでも方法はあるはずだ)


あせる気持ちを落ち着かせるように、リーマスは自分に言い聞かせるながら、暗い階段を上った。
よかったなという目を向けてきたシリウスに、頷くわけにはいかない。


「レナ……」


このことを彼女が知ったら、なんと言うだろうか。
どんな顔をするだろうか。

もう寝ているレナの部屋の前に立ちながら、リーマスは考えた。
万が一に備えて、自分も何か動くべきなのだろうが、今すぐにいい案は浮かびそうにない。

会議が深夜であってくれて助かった。
策を考えるどころか、まともに顔を見る自信すらない。
どうせ帰るんだからと言い訳を繰り返してきたつけが、ついに回ってきた。

そんなリーマスの心情をあざ笑うかのように、レナの部屋のドアノブが小さな音を立てて回った。



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※話の都合上(プロット段階では3月だと勘違いしていたともいう)、ダンブルドアが学校を去る時期を1ヶ月前倒ししております。


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