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憂鬱な狼2
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自分の部屋に戻ったリーマスは頭を抱え、ダンブルドアの提案について考えた。
ダンブルドアはリーマスに、どうしても辞職するというならレナを預かっていてくれないかと頼んできた。

もう学校では匿えない。
だからといって魔法省に引き渡すのも、1人で見知らぬ土地に放りだすのもかわいそうだ。
その点リーマスなら打ち解けているし信用も置ける――と。


「無理に決まっている」


ホグワーツで生活する間でさえ、マクゴナガルに頼んだのだ。
ダンブルドアの庇護を受けられる状況下ですら部屋に置くことを断ったというのに、なぜ1人暮らしの家に呼べると思ったのだろうか。

いくらダンブルドアに恩があり、今回の件で迷惑をかけたという後ろめたさがあるとしても、こればかりはそう簡単に承諾することはできない。
だいいち、レナが嫌がるに決まっている――。

そう反論したが、ダンブルドアはリーマスの意図とは違った方向に解釈したらしく「では本人に聞いてみるとしよう」と言ってきた。
自意識過剰だと馬鹿にされるのを覚悟の上で、レナがリーマスに特別な感情を抱き始めている恐れがあることも恥を忍んで話した。
しかし無駄だった。

――うまくいこうがいくまいが2年後には戻るんじゃ。わりきってしまえばよい。

こともなげにダンブルドアは言いきった。
突然突き放すほうがかわいそうではないかと聞かれ、反論できなくなる。
“どうせ去るなら”という言い訳は、以前リーマス自身も使ったことがある。
なぜ自分がこんなに焦っているのか、よくわからなくなってきた。


「私はどちらの答えを期待しているんだろうね……」


リーマスはぽつりと言い、窓の外を眺めた。
折鶴と同じような色の、恨めしいほどの青空が広がっている。

人狼であるということを差し置いても、金銭面や心理的な問題など、リーマスがレナを預かるには乗り越えなければならないものが数多く存在する。
だから断ってもらいたいのだが、嫌がられたら嫌がられたで、自分はショックを受けるだろうなと考えると笑えなかった。


「何を考えているんだか……」


青空から目を背け、俯けば、太陽光によって作られた影さえ揺れて見える。
リーマスは頭を振り、机の上に置いた、昨夜の事件を引き起こした一因へと目を向けた。

忍びの地図上では、レナの名前はまだマクゴナガルの部屋にある。
食事をした後にやってくると言っていたから、もうじきこちらに来るだろう。
どんな顔で見られるのか、いまレナは何を考えているのか、気にするなというのは無理な話だ。
地図を広げっぱなしにすることさえしなければ、少なくともレナを巻き込むことはなかったと考えると、自分の不注意さにほとほと嫌気がさす。


「……ひとまず、片付けでもしておこうかな」


じっとしていると余計なことばかり考えてしまいそうだった。
リーマスは独り言を続けながら、ホグワーツを去る準備を始めた。


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