20130506222308 | ナノ
U17合宿に行ってしまった小春を追いかけて、嫌がる財前を道連れにやってきた合宿所…のはずが、俺たちが今いる場所はとても人が生活していけるとは思えない森というか崖というか…。
「どこなんやここは!!」
「そんなん俺が聞きたいっすわ。」
「小春はどこにおんねん!」
「少なくともここにおるわけ…あ。」
巻き込んでしまったのは悪かったと思うが先輩になんて態度だ。
そんな生意気な後輩が間の抜けた声を出すものだから、視線の先を追う。
「…小春!!」
愛しい愛しい小春の後ろ姿。
俺が見間違えるわけがない。
テニスバックを放り投げその背中めがけて全力疾走。
後ろで財前がバックを持って行けと文句を言っているのを無視して小春の背中に抱き着いた。
「プリッ?!」
「プリッ?小春今プリッて言ったんか?!かっわええー!!」
「ちょっ!離しんしゃい!俺は金色じゃなか!」
「は?何言っとんねん…」
小春はこんなしゃべり方だったろうか。新ネタか?なんてことを考えていると目の前の小春…だったはずの人間の坊主頭からふわっとした銀色の髪の毛が現れた。
メガネをはずし、グイッと顔をぬぐった男は…
「立海の仁王…?!」
「俺のこと知ってたんか。」
「もちろんや!」
知ってるも何も全国大会で一目見て以来なぜだか忘れることができなかった。
わざわざそんなことを口にしようとは思わないけれど。
「ところでなんで小春になってたんや?」
「お前さんとこの一年坊主に頼まれてのぅ。」
うちの一年坊主…ということは金太郎か。
というかなぜ金太郎にしろ仁王にしろこんなところにいるのだろう、と疑問を抱きつつも、この仁王のイリュージョンの完成度の高さにやっぱりこいつは面白いと、小春に会いに来たことすらも忘れて、仁王の手を握り感想を伝える。
「を騙すとはさすがや!!…でも俺の物まねも負けんど?」
「へぇ…じゃあ物まねバトルじゃき。」
「望むところや!!」
投げ出したバックを運んできてくれた財前を無理やり審判にして開始した物まねバトル。
四天のメンバーや有名な手塚や跡部や真田なんかの物まねで対決を繰り返す。
「はい、全部仁王さんの勝ちー。ほな俺は向こう行ってますわ。」
対決の最中に聞いた仁王の話によるとなんでも合宿所で勝ち負けに分けられ負けたやつらがこの危険な場で修業をするらしい。
最悪や。と文句を言いながらほかの負け組メンバーがいるという場所に向かった財前を見送ってから、俺は仁王に降参のポーズをしてみせる。
「惨敗や。仁王のは物まねなんてレベルじゃあらへんな。本人や。」
財前の俺に対する恨みを抜きにしても、足元にも及ばない。
物まねバトルで負けたのにもかかわらず、不思議と悔しさよりも仁王への関心が増すばかり。
「ありがとさん。俺もこんな風に対決したの初めてじゃき、楽しかったぜよ。」
そういって二イッと笑った仁王を一瞬かわいいと思ってしまって、そんな気持ちに気づかれないように話を逸らす。
「全国の白石イリュージョン、うちのやつらみんな大絶賛やったで!」
そう。白石も「仁王君、俺になってくれたってことはちょっと期待してもええんかなー。」なんて抜かしていた。
あのとき妙にイラッとしたのはなぜだったのだろう。
「ああー、全国大会…結局無様に負けたぜよ、意味がない。白石にも悪いことしたかのぅ。」
それまでの余裕そうな表情をわずかにゆがませた仁王を励まそうとバンバンと背中をたたく。
小柄な自分がいうのもなんだけれど、こおの身長にしてはずいぶんと細い。
「試合に負けようがあのイリュージョンは完璧やったで!魅せたもん勝ち、驚かせたもん勝ちや!!」
普段小春以外の人間を誉めようとなんて思わないし、励ましたりするような人間ではないけれど、目の前の男のことはどうしてか元気づけてやりたくて、必死に言葉を探すも我ながら何を言っているのだろう。
こんなとき師範や小石川だったら…
励まそうとしたのに逆に自分が落ち込みかけたとき、フッと言う笑い声が聞こえ仁王を見る。
「なんじゃそれ…でも元気出たぜよ。ありがとさん。」
そう言ってふわりとほほ笑んだ仁王は今まで見たことないくらいきれいで胸がざわつく感じがした。
それ以降、修業の合間に仁王と話す度になんだか今まで感じたことのない変な感じがするのだ。

仁王がやたらと金太郎をかまっていたり、樺地と親しかったり、なんだかんだ大石と楽しそうにしているのを見ると、小春がほかの男をかわいいと言っているのを見るのとはちょっと違うイライラに襲われる。
この気持ちはなんだろう…なんて国語の授業でならった詩を口ずさんでしまいそうに
なるくらい俺はおかしい気がする。
「やっと明日で帰れるんやな!」
修業最終日。
テニスとなんの関係があるんだと思うような修業…と言えるのかわからない苦しい毎日も今日で終わり。
明日合宿所に行き革命を起こすらしい。
そもそも自分は最初から呼ばれていないのだけど。
なんか感慨深いなと川のほとりで二人きりになった仁王に話しかける。
「おん。一氏は金色に愛会いに来たんじゃろ?ようやく金色のところに行けるなり。良かったのぅ。」
「へっ?あ、ああ。そうやな!!愛しの小春待ち遠しいわ!」
わざとらしく小春ー!と叫んでみたけれど、今の今まで小春に会いに来たことを忘れていた自分に驚いた。
それよりも…合宿所に戻ったら、仁王の相方のような…特別な存在であろう柳生がいるのだ。
二人はまさか恋人なのか。…いや、なんでそんなことが気になるんだ。と思考を巡らせていた俺は、俺の言葉を聞いた仁王の表情に気が付かなかった。

翌日、合宿所についた負け組と、俺たちが今までいた場とはまさに天地の差である豪華な場所で練習をしていた勝ち組とが感動の再会を繰り広げる。
「小春ぅぅ!!」
「あら、ユウ君来てたんか!」
「小春を追っかけてきたで!」
もちろん自分も例外ではなく、そういって小春に抱き着いた。
やっぱり小春のことは大好きだ。…しかし小春に会えた喜びよりも、ここ最近ずっと胸につっかかっているもやもやの方が大きいのだ。
「なあ小春…相談があるんや。」
「相談?どうしたん?私にできることならなんでもするで?」
「おん…。あ、あんな、俺最近仁王と話してると変な感じがすんねん。」
「む、仁王?」
俺がくるまで小春と話していた真田に反応されるが気にしている場合ではない。
「なんや…仁王の笑顔見ると心臓のここのあたりがざわっとするっちゅーか、もっと見たいとも思うし、ほかのやつらと話してるとなんか腹立つし…アホみたいな修業も仁王と一緒だと楽しいちゅーか…なあ、俺どないしたんやろか!」
俺の言葉を聞いた小春はなるほどねぇ…と言ってにっこりとほほ笑んだ。
「ユウ君、それは恋や。」
「「恋?!」」
なぜか真田とハモってしまった。
「恋って…お、おれが好きなんは小春や!そうやろ?!」
「私に対する好きはパートナー、友達としての好き。仁王君に対する好きは恋愛の好きや。」
「そ、そんなん…」
頭を抱える俺に小春が質問を投げかけてきた。
「ねえユウ君、一緒にいるときに離れたくないって思うんは、自分が守ってやりたいって思うんは…触れたい、キスしたいって思うんは私と仁王君どっち?」
「キ、キスだと?!接吻などたるんどる!」
「真田君はちょっと黙ってて。」
「む…。」
話したい、守りたい、触れたい、キスしたい…
「仁王や…!」
そう叫ぶと、俺の言葉を聞いた小春がものすごくうれしそうに肩を叩いてくれた。
そうか。この感じたことのない不思議な、切ないような温かいようなおかしな気持ちが濃いだったのか。
そうとわかったら仁王に伝えにいこう。思い立ったが吉日や。
「小春、おおきに!仁王のところ行ってくるわ!」
「仁王君ならロビーの端のソファにいたわよー!」


「柳生ー。帰りたいぜよ。」
「何言ってるんですか。せっかく戻ってきたのに。」
「仲ええところ見るの辛いんじゃもん。」
「もんって…あれはダブルスパートナーとしてでしょう?」
「なんでそんなんわかるんじゃ…」
「逆にどうしてそう思わないのかが聞きたいですね。」
「柳生の鬼ー。」
「人聞きの悪い。…で、やっぱり好きなんですね。」
「そんなこと一言も言っとらんぜよ。」
「ではなぜ二人の仲がそんなに気になるんですか?」
「それは…。」
「お互いが自覚すればうまくいくと私は思うんてすがねぇ。」


ロビーに着いてあたりを見渡すと、小春の言う通り、端に備えられたソファに腰掛ける仁王の銀色の頭が見えて、駆け寄ろうとして足を止めた。
隣にいるのは柳生だ。
柳生と話す仁王の顔はなんだかリラックスしていて、楽しそうで…
この嫉妬も仁王に恋をしているからだと今ならわかる。
たとえ仁王と柳生が恋人同士であろうと、そう簡単に諦めてやるもんか。宣戦布告や。
と意気込んで二人に近づくとこちらに気がついた柳生が仁王の耳元で何かを囁き、仁王は顔を赤くした。
あんな顔、見たことない。見せつけだろうか。
腰を上げ、こちらに向かってきて、眼鏡を押し上げながら会釈をして去っていく柳生の背中を軽く睨み付けてから、仁王のそばによる。
「仁王…宣戦布告や!お前を絶対に柳生から奪い返して見せるで!!」
かっこよくきめたつもりだけれど、仁王はきょとんとしている。
ああ、そうか。宣戦布告は柳生にするべきだったか。
「いや…お前さん、俺と柳生をなんじゃと思っとるん?」
「何って…恋人なんやろ?」
口に出すと認めてしまってるようで嫌だけれど仕方がない。と仁王の質問に答えると、仁王はやけにがんなりとした顔で返してきた。
「ないないない。柳生となんて付き合えるわけないじゃろ…」
「ほ、本間に?」
「おん。あいつは親友、みたいなもんかのぅ。…ちゅーかお前さんこそ金色と付き合って…」
柳生とはなんともない、と聞いてガッツポーズをしようとした俺の耳と目に飛び込んできた言葉うつむいたと仁王の姿に、あわてて仁王の横に腰を下ろし方をつかむ。
「小春と俺は…相棒みたいなもんや!恋人じゃないで!」
「…ほんまに?」
「おん!ちゅーかそんなん気になるっちゅーことは仁王、俺のこと好きなんか!」
「…は?!な、なんでそうなるん!!」
「小春がそれは恋や言うてた!!」
「まーた”小春”か…」
「嫉妬しとるんか!?」
「なんでそうなるんじゃ!」
「そんな嫉妬せんでも俺が好きなんは仁王や!」
そう言って自分より大きいけれど自分と同じくらい細見の仁王の体をぎゅーっと抱きしめると、プリプリ言っていた仁王はおとなしくなって胸に顔をうずめてきた。
「仁王…かわええ!!」
もっとその顔がみたくて、仁王の頭を持ち上げようとする俺の腕を、仁王がつかんで拒むけれど、耳まで赤くなってるのは丸わかりで。
「俺たち両想いやったんやなー。」
「…おん。」
「まだ仁王の口から聞いてへんけど…」
「…好いとうよ。」
「こ、小春ごめんなぁ!俺もう仁王しかかわいいって思えへん!」


「…まったく、世話のやける二人でしたね。」
「仁王くんかわええわあー。ロックオン!」
「私の大事な仁王くんの幸せの邪魔だけはしないでくださいね。」
「そのセリフは私からも言わせてもらうわ。」



ユウジの口調難しい…
なんだか謙仁っぽいですね謝罪!
ユウジと仁王って気が合いそうです。
40.5でユウジが仁王に物まね対決挑んでるの可愛くて、DVD6巻のコメンタリーでは発狂しました。

マイナーCPですが、ユウニオ仲間の大好きなフォロワーさんが出来た記念(笑)
私は柳生や小春はそれぞれ仁王とユウジの恋を応援するお母さんみたいな存在だと萌えます。

お互い合宿前から好きだったけど柳生.小春と付き合ってると勘違いし気づかないふりしてて
柳生が仁王に囁いたのはチャンスですよ、頑張ってください。ってことです!


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