並んだ2つの名前 | ナノ
定期テスト一週間前の放課後。
勉強時間確保のために全部活動が禁止となっているため、校舎にはもうほとんど生徒は残っていない。
そんな中3年B組の教室で机をくっつけて向かい合う派手な頭をした2人の男子生徒。

部活動禁止にしたところで大人しく勉強なんて誰がするか、と言いたいところだが赤点を取ったら真田に殴られるのが目に見えている。
仕方なく机に向かいながら丸井は不満を漏らす。
「そもそもテスト前にこんな課題出すとかおかしいだろぃ。」
「これやっとけばそこそこ点数とれますよーってことじゃろ。」
本物そっくりの教師の物真似を交えて答える仁王に、丸井はケタケタとひとしきり笑い終えると眉をしかめる。
ペンを持つ右手は動かず左手はスナック菓子に伸びている。
「こんな難しい問題でそこそこって厳しすぎるだろぃ。」
「こんなん基礎じゃよ、基礎。」
「…俺が基礎すら出来ないって言いてーのかよぃ?」
「プリッ」
という言葉と共に仁王はペンを投げ出し身体を伸ばす。
「お前まさかもう終わったのかよぃ?!」
「俺馬鹿じゃないからのぅ。」
「遠まわしに俺を馬鹿だって言ってんだろぃ?」
「ピヨッ」
「まあいーや。お詫びにプリント写させろよぃ。」
「真田に言いつけてええんじゃったらどうぞ。」
「お前少しは彼氏の為にとか思わねーのかよぃ?」
「その彼氏のためを思って言うとるんに。」
少しふてくされたような声に、いつもなら譲ってしまうところだが今回はそうはいかない。
「数学なんて将来役に立たないだろぃ。」
「音楽の方が役にたたん。」
「…音楽サボってんの真田に言われたくねーだろぃ?とにかく写すぜぃ。」
有無を言わさぬ丸井の言葉に諦めたのか、はたまた最初からどうでも良かったのか、仁王はもう何も言わなかった。

本当は仁王のサボリのことを言いつけるつもりなんてサラサラない。
自分より10センチ以上背が高いのに体重の変わらない、その上同じような身長・体重のやつと比べて妙に細い仁王に真田の重い鉄拳を食らってほしくないから。
そこまで弱々しくないと分かっていても、この愛しい詐欺師にはどうも甘くなってしまう。
まだ3分の1も埋められていない自分のプリントを見てようやくペンを動かし始めた。

あと4分の1くらいで写し終わるかというとき、ふと顔を上げると前に座っていたはずの仁王が教卓の方に移動し黒板に何かを書いている。
「なーにやってんだよぃ?」
声をかけられた仁王は慌てて黒板を隠そうとしたが僅かに遅く、丸井は黒板に書かれたそれを見て楽しそうにガムを膨らませた。
「へー。結構乙女なんだな?」
「…もう消す!どきんしゃい!」
「まぁまぁちょっと待てよぃ。」
黒板消しを手にした仁王の両手首を掴み、妨げる。
いつもは心配でならないテニスをする男にしては細過ぎるその手首に今は感謝しよう。
丸井は仁王を押さえているのとは逆の手でポケットからスマホを取り出し黒板に向けた。
「何しとんの。」
「仁王のスマホも赤外線ついてたよな?ちょっと出せよぃ。」
「ついとるけど…」
疑わしそうな顔をしながら仁王が取り出したスマートホンに丸井は自分のものを向ける。
「送信完了ー!待ち受けにしようぜぃ!」
「…誰かに見られたらどうすんじゃ。」
「逆に見せつけてやろうぜぃ。仁王は俺のもんだってよぃ!」
「…アホか。」

夕日の差し込む他に誰もいない教室で、2人はクスリと笑いあう。
2人の手に握られたスマートホンと黒板には、相合い傘とその下に並ぶ2人の名前が描かれていた。




放課後の教室で勉強という名のお喋りって、中学生らしい気がしますが如何せん遠い昔のことすぎて。

仁王が黒板にこっそり相合い傘とか書いてたらかわいい。
そう思うのは私だけではなくブン太も同じ。
お揃いの待ち受けに笑いあう2人をカメラにおさめて皆さんにもプレゼントしたい。
放課後教室、他キャラでも書こう!

以上



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