何度でも2 | ナノ

今日の部活はゲーム形式ということで全てのコートが見回せるベンチに腰を降ろしゲーム展開を観察する。

「ゲームセット。ウォンバイ仁王柳生」


「はい約束通りジュース2人の奢りじゃよー」
「私はご遠慮します。ご馳走になるわけにいきません。」
「うわ、柳生が紳士ぶっとる。」
「いくらでも奢ってやるぜぃ。ジャッカルが。」
「俺かよ!」

ゲラゲラと楽しそうに笑いあう4人の元へ向かい、全員にお疲れと声をかけてから仁王の肩を叩く。
「中々いい試合運びだったよ。さすが俺の恋人だ。」
何言っとんの、と言いたげな顔をしている仁王の隣に立つ柳生が口を開く。 
「幸村くん、私の立場がないのですが…」
「もちろん柳生も良かったよ。ダブルスのパートナーとしてね。それ以外では一切譲らないよ。」
「それは承知しております。」
元々良い姿勢を更に正して言う柳生にクツクツと喉を鳴らす、仁王の笑い方が好きだ。

「そっちも試合終わったんすね!じゃ仁王先輩シングルスやりましょーよ!」
「もう疲れたぜよ。勘弁してくんしゃい…。」
「そこを何とか!いっそダブルス組んじゃいます?」
「無理じゃってばー。」
グデグテとベンチに腰かける仁王とその体を揺らす赤也に柳が近づく。
「仁王はどうも体力がつかないな。」
「今日は特別じゃ。賭けとったからいつもより本気出したんよ。」
「それならいいが。あまり大きな声で言うと…」
「仁王!今のはどういうことだ!普段から本気でやらんか!!」
柳の声をかき消し怒鳴りだした真田にゲッとした顔をして俺の後ろに隠れ、助けてくんしゃいと乞う仁王に少し呆れながらも結局助けてしまうのは、惚れた弱みってものなのだろう。

仁王とこの仲間たちとなら全国三連覇は確実だろう。
夏が来るのが待ち遠しいな。
桜の舞い散る空を見上げながら1人呟いた。


部活を終え、用事があると言って仁王が途中で先に帰ってしまったことを少し寂しく思いながら帰路に着く。
夕食の時間までまだ余裕がある。
夏が近付いたらこんな余裕もなくなってしまうだろうと自宅への道とは違う道へと進んだ。

お気に入りの店の自動ドアをくぐると、先ほど別れた彼の姿が目に付いた。
「用事って画材店に来ることだったの?意外だな。」
恋人とはいえこいつの考えや行動はやっぱり分からない。
そこがまた面白いんだけどね、と笑いそうになるのをこらえる。
「研究じゃ。でもやっぱり水彩画はよう分からんぜよ。」
と仁王は眉をハの字にしてみせる。
「研究がしたいなら俺が手取り足取り教えてあげるって言ってるのに。」
「遠慮してオキます。」
「何だいその言い方。失礼だなぁ。…仁王?おーい、仁王ー?」

何も言わず俯いている仁王の体を揺らすとようやくハッとして舌を出した。
「すまんすまん。イップスかかっとった。」
「…まったく。俺以外の前でボーッとするなよ?お前は危なっかしいんだから、何かされるんじゃないかって不安で仕方ないよ。」
「そんなやつがおったら幸村がコテンパンにしてくれるんじゃろ?」
「当然さ。」

春の日差しのように暖かなこの時間がいつまでも続けばいい。
いつまでも続くはずだ。
そう強く思った。

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