とりあえず、俺は食堂のおばちゃんに話を聞くことにした。
アカデミーでも食堂に入り浸り、何かと職員と仲良くなっては好物を差し入れしてもらっていたジェニウスだ。
ヴェサリウスでもさっそくそのスキルを使ってジェニウスは食堂に入り浸っていたので、間違いないはず。
「ここに居なければ他を探すしかないか…」
俺は食堂に入るなり、カウンター越しに厨房へ声をかける。
「すみません。アルテミス・ヴァル・ジェニウスを見かけませんでしたか」
「アルテミスちゃん?今日は来てないねぇ」
「そうですか、ありがとうございました」
俺は儀礼的に礼を言うと、その場から去ろうとした。
「あっ、ちょっと待って」
「はい?」
「これ食べてみてくれない?」
「は?」
そう言って出されたのは、いかにもアルテミスが好みそうなデザートだった。
「いや、あの…」
「アルテミスちゃんが顔出してくれないから試作品の試食がたまってるのよ。今日の分」
今日の分って!!アイツはいつもこんなことを?!
「それは、アイツが来た時に…」
「いや!この際誰でもいいわ!さぁさぁ!!一口!一口でいいから!」
おばちゃんの余りの勢いに俺は仕方なく試食をする。
「どう?」
心配そうに眺めるおばちゃんだが、まだ話せない。口の中を空にしてから感想を言うのが常識だろう。
そして俺は丁寧に租借してから感想を述べた。
「これならアイツも気に入るのでは?」
「味はOK?!」
「ええ」
「よかったわ!次はこれね!」
「え」
すかさず二品目が差し出され、俺は思わず一歩引いた。だが、彼女の目はキラキラと光り、何かを期待する目で見つめてくる。
「さぁ!さぁ!」
「…………いただきます」
少しだけならと俺も付き合ったのが間違いだったのか。それからおばちゃんは次々と俺に試食品を出してきた。怒涛の勢いで。
「あのっ……そろそろっ!」
「まだまだ!たくさんあるわよー」
「いや、こんなには…」
「………おばちゃんが丹精込めた試食を…拒むのかい?」
おばちゃんの瞳が怪しく光る。
くっ……このままではこれから先、ヴェサリウスでの俺の食が……運命が変わるっ!
危機を感じた俺は、大量の冷や汗とともに承諾した。
「!!……い、いただきます」
「よかったわー!!さぁ、どんどん行っちゃって!」
ずらりと並べられた試食品に、俺はさっそく後悔気味だった。
勘弁してくれ!!!というか、覚えてろよジェニウス!!!
そうして俺は涙目で全ての試食を完食したのだった。
食堂のおばちゃんEND
(うっ……も……もぉ……)
(あらっ。これくらいで……やっぱり試食はアルテミスちゃんよね…)
(ふ……ふざけんなぁ…!)
お腹いっぱい限界(もう動けない!)
☆残念!不正解!もう一度トライしてみてね♪