「個人面談はじめます…」
「せーんせい?どうしました?なんだか疲れたような顔してますね」
「…」

誰のせいだと、と怒る元気すら出てこない。目の前の彼は私の大事な生徒なわけで、私はもちろんちゃんと卒業してほしいわけで、それでも彼は私の授業だけぶっ通しで寝、提出物は未提出強制回収のプリントは一切未記入。ただテストは、平均点が42点のテストは、100点満点。平常点を多く見るのがこの学校のルール、本来木ノ瀬くんは赤点確実なのだけれど、私が頑張って他の先生を説得した上でテストの結果に免じてもらっているのだ。

「というわけで、授業はちゃんと受けてくれないかな…」
「嫌です」
「なんで?2年生までは真面目に授業も受けていたし提出物も完璧だったって聞いたよ…私が担任になったばかりに…」
「違いますよ」
「もしかして、新米教師だから、私嘗められてる…!?」
「いえそんなことないですよ、先生の困った表情、好きなんです」

意地悪くない、純粋な表情で言う彼を見て怒る気も失せた。困った表情が好きって、どういう…自分の困った顔なんて滅多に見る機会がないからさっぱりだ。気ノ瀬くんには個人面談でみっちり説教をする予定だったのに、情けないな。

「木ノ瀬くん進路決定まだでしょう。今プリント持ってる?」
「持ってますけど、書いてないです」
「なんで…!もう時間がないのに!」

ああ担任として本当に情けない。生徒にプリント出させることすらできないなんて、もう提出締切から2週間も過ぎているのに、でも一番情けないのは。僕まだ迷ってて、悩むに悩んでるんですけどちょっとした、あれです。苦しそうに言う、木ノ瀬くんの悩みに気付けなかったこと。だから皆に新米新米って言われるんだなあ、お得意の自嘲癖。

「迷ってるんです、聞いてもらえますか?」
「う、うん!もちろんよ!」
「僕、宇宙飛行士になりたいんですけど、」
「うん、うん」
「それ以上に恋人にもなりたくて、でも宇宙飛行士になるためには渡米しなくてはいけない。僕はどうしたら…」
「どっちかが選べないなら、両方叶えちゃえばいいのよ!それが木ノ瀬くんでしょう」
「そう、ですよね」
「それに遠距離恋愛なんて愛があればたいしたことないよ」
「…その言葉を聞いて安心しました」

先生聞いてくれますか、僕とお付き合いしましょう
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