「錫くんのつくるオムライス、だいすき」

小さい頃、お前が笑って言った。初めて俺が作った料理は名前に食べさせた、今とは打って変わってお世辞にも綺麗とは言えない出来だった、卵が若干ぐしゃっとなってしまったオムライス。それをお前は美味しいと笑って、あの時はすっごく練習したな。馬鹿みたいにオムライスばかり作って、哉太は模索品を食べては、ほかのもつくってくれよ、と項垂れていたっけ。

「ふふ…それで出来たのが、このプロ顔負けのオムライスなわけですか錫也くんや」
「まあ、そういうことです。名前が喜ぶ顔がみたくて、必死に頑張ったんだぞ?お前の嬉しそうな顔が、俺の幸せだから」
「錫也、私今とっても嬉しいよ?落ち込んだ時にこのオムライス食べると元気出るんだあ、久しぶりに食べれるなんて、嬉しすぎるよ」
「はは、嬉しい、な。オカンやっててよかったよ、もうすぐできるから」

ありがとうね錫也、やっぱり元気なく笑った。コイツが俺にオムライスを作れと言う時というのは落ち込んでいる時で、きっと今コイツは、親友の月子に彼氏ができてしまったことで若干の疎外感を感じている、んだと思う。名前をここまで虜にする月子が羨ましいな、と思いながら月子を相手に嫉妬している自分に思わず自嘲気味に笑ってしまった、女友達同士なのに、な。

「錫也どうしたの」
「え…?」
「眉間にシワ、寄ってます、よ!」
「ああ…、名前をこんなにさせてる月子がうらやましいな、って」
「…何故悩みの原因を知っている」
「お前のことならなんでも知ってるよ、いつも見てるから」

ぼんっと林檎のように顔を真っ赤にするお前が愛しくて愛しくて、思わず、頬に手を添えたらさらに赤く熱くなって笑ったら小突かれた。そして口を尖んがらせていじける名前、表情、仕種、何もかもがかわいくて時偶どうにかなりそうになる。今すぐ抱きしめたい、そんな衝動にかられる。そんなことを考えながらも料理中の動作は止まらない、オムライスが完成して、黄色でふんわりな卵の上にケチャップで今思っている二文字を書いた。

「ほら、完成。お召し上がりください、お嬢さん」
「ありがとうー!…って、すすすすきって、なに、」
「ああ、ごめん、お前のことすきだなーって思ってたら、つい」
「つい、にも程があるでしょ!も、勿体なくて崩せません!」
「お前が望むならいくらでも囁くよ、なんてな…はは、気にしないで食えよ」
「気になるよ…」

ぶつぶつ言いながらちみちみとオムライスを頬張っては美味しい美味しいと連呼する名前を見て、今一度頭を撫でてやる。目を細めて笑むコイツをみて、ああ、やっぱり好きだな、って。
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