錫也誕 | ナノ

自分で決めたこと、頭では分かっていても思い浮かべると目頭が熱くなるのだ、今頃東月くんと月子ちゃんは2人でお弁当を食べているであろう、東月くんもう告白したのかな。只今7月1日昼休みお弁当の時間。私からの、土萌くんと哉太くんの協力もあっての、東月くんへの誕生日プレゼント月子ちゃんと2人の時間を増やしてあげることを決行中。あれだけ月子ちゃんラブな土萌くんと哉太くんが協力してくれるだなんて東月くんは愛されてるんだな。私だって、す、好きだよ。でも私は東月くんとも全然話したことないし数少ない貴重な会話でもかっこよすぎて顔を見て話すことができないし恥ずかしすぎて毎度毎度顔面から汗噴出、月子ちゃんは昔からずっと東月くんと一緒に居るしかわいいしとても優しい子、東月くんが月子ちゃんを選ぶのは最早必然的で、だから私はせめて東月くんの想いを尊重して幸せを願いたい。今更だけど月子ちゃんの想い人を私は知らなかった、東月くんであってくださいと思うと同時にそうでないと嬉しいです、私は諦めの悪い醜い子だ。泣きそう。

「せっかく一緒に飯食えてんのにめそめそしてんなって」
「うう、不知火さんごめん…」
「お前の大好きなメロンパンがまずくなるぞ?」
「だって、」

言いかけて口を結んだ。せっかく不知火さんが気をつかって私とお昼を共にしてくれて居るのに、八つ当たりみたいに愚痴なんて言っていたら不知火さんに悪すぎるし、不知火さんだけじゃなくて月子ちゃんや東月くんにも悪い。本当に自分ってば醜いな、ふいに再認識して落ち込んで俯いてしまった。そんな私に不知火さんは、俺に全部ぶつけてみろ、と入学式の傍若無人な挨拶の時のような自信たっぷりの表情で言うのだ。

「私だって、私だって東月くんのこと好き、です。でも東月くんは私じゃダメで、だから私は東月くんの幸せを願うって決めたのに、素直に願うことができなくて、」
「……お前じゃなきゃ、ダメなんだよ」

目から一滴の液体が流れ、それと同時に不知火さんに身体をふわっと包み込まれる。不知火さん、と声をかけても不知火さんは応答してくれなくて、お前をこんなにさせてる東月が憎たらしい、ぽつりと呟いた。俺ならお前にこんな思いはさせないのにな、と力なく今にも泣きそうに笑う不知火さんを見て、なんだか私が泣いてしまった。

「な、何でお前が泣くんだ!泣きたいのは俺の方で、」
「不知火さんが何に悩んでるのかは分からないですけど、何か泣きそうだったから!いつも私の話は聞いてくれるくせして自分は我慢して!」

不知火さんのこと好きだけどそんな不知火さんは嫌いです、と泣きながら縋り付く。私は余裕の表情の不知火さんしか知らなくて、そこにはびっくりしたような表情の不知火さんが居て、次第に弱々しいけど先程の泣きそうなのとは違った笑みへと変わった。不知火さんは私の頭をぽんぽんと撫でた、私はこの行為が安心するしとても好き。

「東月なんかに、渡したくないな」
「俺が譲るわけないでしょう、とりあえず、離れてください」

は、と不知火さんと私の声が重なった、私達2人しか居ないはずの生徒会室で第三者からの返答がある。びっくりして声の主の方へと向けば、そこには東月くんが居た。なんで、と問い掛ける暇もなく私達の元へと近寄ってきた東月くん、不知火さんから離し自分の元へと寄せ、私は東月くんに後ろから抱きしめられた体制にいる、前には眉間にシワを寄せる不知火さん。

「…東月」
「名字さん、」
「は、はい、あの、とりあえず離れ、」
「クラスメートに、誘われたんじゃなかったのか?なんで生徒会室にいるんだ、俺何かしちゃったかな…、もしかして、嫌われちゃった?」
「そんなこと…!」

あの東月くんの声が震えている。びっくりしすぎて上手く舌がまわらない、違うの、そう否定すれば何故避けたのかと問われる。避けたつもりではなかったし、もしこれで東月くんを傷付けてしまったのなら、私はとんだ迷惑勘違いやろうだ。泣きそうな声の東月くんが涙腺の弱っている私は伝染しそうで、涙ぐんだ声で、言った。

「月子ちゃんと2人きりにさせようと思って、」
「な、んで」
「東月くんが月子ちゃんを好きだと思ったから、今日、東月くんの誕生日だから、」
「…月子が、月子が言ったんだ、名字さんは生徒会室に居るって教えてくれた」
「!なんで…!」
「あの鈍感な月子がわかってたのか、俺が好きなのが名字さんだってこと」

開いた口もふさがらず、空気と私の思考回路が見事に凍る。東月くんは今なんて、なにがなんだか分からなくなって目で不知火さんに助けを求めたら、苦笑いでお前の望みが叶ったんだよ、と言われた。私の望みは、東月くんに、振り向いてもらうこと。それが叶った…?

「生徒会長にお願いがあります」
「、なんだ?」
「名字さんを、俺にください」

本人に聞けよ、ははっわかりました。その言葉と同時にようやく解放された、と思いきやぐるりと回転、今度は東月くんと向かい合う体制になった。真剣な東月くんにどきっとしてしまう。

「名字さん、好きです、俺と付き合ってください」
「わわわ私も、好きです、受験の時、受験票を届けてくれたあの時から、好きでした、私でよければ付き合ってください」
「覚えててくれたのか?…嬉しいな、俺もあの時から、一目惚れしたんだ、この人じゃないと思った、…これからよろしくお願いします、」
「、こちらこそ…っ」

東月が嫌んなったらいつでも俺の胸に飛び込んでこいよ、と言った不知火さんに東月くんは、それは絶対にさせません。幸せにします、と余裕の笑みと一緒に返した。

「東月くん、お誕生日おめでとう!」
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