錫也誕 | ナノ

「名字さんー天文科の東月が呼んでるよ」
「え」

彼、東月くんは、本当に私とお昼を食べるつもりらしい。

「名字さん、行こうか」
「あ、はい、わざわざすみません!」

俺達だって名字さんとお昼食べたいのに天文科のヤロー、なんて声を背後から受けつつ東月くんについていく、というかそれなら早く声をかけてもらいたかった私のぼっち飯の日々はなんだったのクラスメート達よ。身長170cm後半はあるであろう東月くんには私の歩幅はついていかないはずで、でも今私が隣を歩いているということは多分東月くんが合わせてくれているのだと思う。やっぱり優しいんだな、と思ってついくすっと笑ってしまったら、東月くんが隣で不思議そうに微笑んだ。無言で歩いているのにその無言がなんだか暖かい。

「もう、錫也遅いよ!」
「悪い月子、今日はお前の新しいお友達を連れてきたんだよ」
「え?新しいお友達?」
「あ、錫也の後ろに名前が居る!」
「え?本当か!」

正直、学園中噂の4人仲良し幼なじみとお昼を食べるというのは怖いものもあった。仲良しで羨ましいという噂もあれば4人の絆が深すぎて入りにくいという噂も聞いていたから。でもなんなんだこの歓迎具合は。夜久さんは新しいお友達?とニコニコしながらだれか紹介されるのを待っているように見えるし、土萌くんと哉太くんはなんだか私が来たことを喜んでいる風に見える、自意識過剰かもしれない。ただその場の空気にびっくりしただけで、思わず東月くんの後ろに隠れてしまった私は本当に小心者だなと思った。そんな私を見て東月くんは、出ておいでって笑った。恥ずかしがり屋な私は顔を真っ赤にしながら、名字名前です、とだけ名乗った。すると目を輝かせた夜久さんにがしっと腕をつかまれた。

「夜久月子です、私名前ちゃんとは前から話してみたいと思ってたの!あっ勝手に名前ちゃんって呼ばせてもらうね、私のことも月子でいいよ。むしろ嬉しいっていうか、その、あっ照れてる名前ちゃんかわいい…!え?名前ちゃんかわいいよ?かわいいの、かわいいもん!抱きしめたいくらいかわいい、ぎゅっ、抱きしめちゃった!」
「つ、月子暴走するな、ストップ」
「もう!錫也も羊くんも哉太もなんで名前ちゃんと仲良しなの!私になんで早く言ってくれなかったの!私前からお話してみたいんだって言ってたじゃない!」
「ごめんね月子、僕は日曜に知り合ったばかりだったから」
「俺も知り合ったばっかだしなあ、何れとは思ってたよ」
「2人ともずるいよ、錫也は?」
「俺は…」

夜久さん、いや月子ちゃんに抱きしめられたまま、幼なじみズの会話を圧倒されながら聞いていた。いつもこうなのかな…開いた口が塞がらない。月子ちゃんはもっと物静かで大和撫子のような子だと思っていたけど、寧ろ元気があって話しやすいのかな、って思った。これはこれでかわいい。あっ間近でみると睫毛長い。なんてさりげなく月子ちゃん観察をしていたら、月子ちゃんに質問されていた東月くんと目が合って、意味深に少し困り気味に微笑まれた。

「俺は、結構前に、知り合ったよ」
「え?ごめん錫也声小さくて聞こえなかった。もう一回、」
「さて、ご飯を食べようか、俺のお手製お弁当だよ。栄養バランスを考えて作ったから、誰かさんがまた倒れたら困るからなー」
「ととと東月くん!」
「はは、冗談だよ、面白いな名字さん」

それからは皆でお話をしながらご飯を食べた。東月くんの料理は本当に絶品で、土萌くんが推しのおにぎりも本当に美味しくて最高だ。皆は皆が小さかった頃の話から最近の話まで沢山話してくれて、私はずっと聞き手にまわっていたけど、飽きなかった。最初は仲間にいれてもらえた気分になってた、でも話を聞いていくうちに私はやっぱり部外者なんだなあと実感させられて思わず苦笑。中でも東月くんは、月子ちゃんの昔話を優しく、でも照れながらお話していて、気付きたくなかった。

東月くんは、どうやら、月子ちゃんのことが好きなようです。
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