錫也誕 | ナノ
なんで東月くんの好きなものを秘密にしたがるのかね、不知火さんにせよ土萌くんにせよ。昨日はそんなことを考えていたら夜ご飯の時間を疾うに過ぎていた。そして考え込みすぎて中々寝付けず朝も寝坊、私は2食ぬいてしまっている。もうフラフラだ…ああ。月曜日の朝というだけで怠いというのに私はとんだ馬鹿だと思う。自分で言うのもなんだが、情けない。

「あ…」

視界が思い切りグラついた。倒れる、床と接触事故、…と思ったのだが何時までたってもこない衝撃を不思議に思うと、

「大丈夫か…!?」

視界いっぱいの彼に思わず違う意味で気を失った。



「運んでくれてありがとな、お前はもう戻りなさい」
「はい…あ、あの、名字さんは大丈夫ですか…?」
「ああ、恐らくただの夏バテだな。少し寝かせとけば楽になる」
「それならよかった。失礼します」

ガラッと扉のあいた音がした。その音で目の覚めた私は自分の状況を少したって把握し、ショックと混乱とを相手に脳内葛藤。あの、あの東月くんの前で倒れてしまった。ところで私は一体どうやって此処まで…?

「東月が運んできた」
「ま、まあそうなりますよね…!?それしかないっすよね!?」

一生懸命脳内から抹消しようとした選択肢、東月くんが運んでくれた、は、努力のかいなし現実だった。東月くんが運んでくれたということは、抱き抱えられた可能性も高くて、たたたた体重が。きっと幼なじみの夜久さんのことは何度も抱き抱えたことがあるはずで、夜久さんはとても細くて、比較されたに違いない。いや担架!担架という選択肢もなくはない!

「東月が抱き抱えて運んできてくれたな」
「よくも私の僅かなる希望をぶち壊してくれましたね」
「現実を見なさい」

一瞬意地の悪い笑みを浮かべた琥太郎先生に大人の魅力を感じた、これが似合う人は私の知り合いでは不知火さんと琥太郎先生と水嶋先生くらいで直獅先生がやったら即腹立つ。ご飯はちゃんと食べてるのか、食べてないですすみません。それなら倒れても当然だろ、とでもいいたげな溜息をつかれ、頭を小突かれた。すみません先生、でも違うんです!

「確かにふらっときた原因はそれなんですけど、気を失ったのは、その、視界に、…えっと、」
「…おい、どうして鼻血が出る」
「あっすみません…これも暑さのせいではないんです、あの、視界に、ととと東月くんが…!いっぱいになって!つい!」
「…その鼻血はなんだ」
「東月くんの顔を思い出したのと琥太郎先生の美顔に…すみません」
「…」

とりあえず寝てなさい、少し呆れながらも薄い布団をかけてくれた先生にやっぱり保健医なんだなあと思った。職務怠慢でも。東月くんの好きなものってなんだろう。ボソッと呟けばそれさえも逃さずに、さあな。
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