錫也誕 | ナノ

はー、と伸びをする者ため息をつく者。午前の授業を修了しクラス内はグダっとした空気が充満し始めた。昼前の授業は最悪だった、どうしてだなんて、お腹が鳴るからに決まっている。この星月学園には女子生徒が私を含め2人、こんなゲームみたいな展開があっていいのかね。入学してから1年経つ私だけれど、もう1人の女子生徒とは接点無し。彼女、夜久月子さん、容姿端麗で皆にはマドンナと呼ばれていて、なんというか輝かしいというか神々しいというか、そんなわけで近寄れないわけだ。勿論小心者の私が男子生徒とそうそう仲が良くなれるわけはなく、何が言いたいかと言うと、お昼ご飯を食べる友人が居ない!友人自体はいないわけではないが、宇宙科1年の梓翼ペアは一緒に居て楽しいけど話題が夜久さんの美しさばかりで私がいたたまれなくなるので却下、白鳥くんは二言目には付き合ってくださいなので却下、どれだけ女の子に飢えてるんだろうか彼は、そして残る友人はあと1人なのだけれど、

「名前居るかー」

ちょうどいいところに。
今私の名前を呼んだのが残る1人の友人、不知火一樹さん。不知火さんはこの学園の生徒会長で、ぽつんと1人歩いていた私に一番最初に声をかけてくれた神様だ。普段は生徒会で片付けなければいけない書類等の仕事が大変で、昼休みはなかなか会いに行けない。

「お前まだ1人で弁当食ってんだって?全く、俺を呼べ俺を、ほら行くぞ」

久しぶりに人とのお昼ご飯だ。


「あーお前アレだ、非常に聞きにくいんだが、」

そのまま不知火さんに着いて行った私は今生徒会室に居る。購買で買ったと思われるパンを食べている不知火さんは、作業の延長なのか眼鏡をかけていてとてもかっこいい、ただ食べながらべらべら話すのでかっこよさが半減だ。不知火さんは口を開くとかっこいいというよりはお父さんになる。私はと言えば話し上手とは程遠いので聞き手にまわって不知火さんのトークに腹をよじらせながら笑っている。お弁当が食べれません、そう言えば悪い悪いと笑う彼、そしていきなり思い出したかのように先程の言葉を放った。

「なんですか?勿体振らないで早く言ってくださいよ」
「いや、そのだな、」
「遠慮なんて不知火さんらしくないですよ!私のお父さんじゃないですかあ」
「そうだぞお前は俺の娘だ!よし、親父から娘に確信めいた質問」
「どうぞどうぞ」

お前好きな人居るだろ、そして相手は東月錫也、違うか?、ゴホゴホ。あまりの突然さに、思わず、むせた。涙目になりながらようやく落ち着いて不知火さんを見ればやっぱりなとでもいいたげな素晴らしいどや顔をしていた。この人を憎たらしいと思ったのは初めてだ、でも彼の言う通り、私は東月錫也くんに片想いをしている。受験の時、大事な受験票を落として慌てていたら素敵な笑顔と共に届けてくれて、そのあとその笑顔が頭から離れなくなった。入学式の時、東月くんを見つけた、その時に恋心を自覚した。私は、東月くんのことを何も知らない。

「俺はお前よりも東月錫也のことを知っている。生徒会長だからな」
「…嫌味ですか泣きますよ親父」
「親父!?ははは反抗期なのか!?良いこと教えてやるから良い子に戻れ名前!」
「言ってみろ」
「…、東月、来週誕生日だ、7月1日」

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -