(02:告白(木ノ瀬))


私の隣にはずっと、幼なじみの龍之介くんが居た。勿論龍之介くんの隣にも私が居たし、異性で一番親しいのはお互いにお互いなのだと思う。龍之介くんは女の子と話すのが苦手なのか、あの容姿であるのでモテてはいたけれど全くといっていいほどお話はしていなかったし、彼女が出来たことはなかった。彼のそんなところに私は甘えていたのかもしれない。お察しの通り、私は龍之介くんが好きだ。でも自分では気付いていないふりをする。私は狡い人間で、気付かないふりをして、まだ幼なじみポジションとして隣に居たいのだ。きっと優しい龍之介くんは、自分に気があると知れば私と関係を続けるつもりはないだろう。突き放した方が相手の気持ちは楽になる、そんな人だ。

「宮地くーん」
「どうした?」

ちょっとすまない。久しぶりに2人で肩を並べ歩いていた。久しぶりに2人きりで他愛のない話をしていた。でもそう言って彼の視線は月子ちゃんの方へと行ってしまった。いつも眉間にシワを寄せている龍之介くんが優しい笑みを浮かべているのを見てときめく半面とても悲しい。こんな顔、私には何年も見せてないのになあ。どんどん自分の顔から笑みが薄れていってるのに気付いても、それを笑顔へと戻す術を、私は知らないのだ。こちらについても私は気付いていないふりをしているが、龍之介くんも、月子ちゃんも、お互いを意識しているんだと思う。気付いては居る。龍之介くんも月子ちゃんも私にとっては大切な人だから、でも協力はできない。醜い自分。

「ごめんね、私先帰るね」

何処か適当な教室へと逃げ込んだ。何科の何年教室だなんて確認する余裕もなく床へと座り込む。一気に力が抜けた感覚。へにゃりと座り込みながらぼーっとしていると私の携帯が幸か不幸か知らせを届けた「夜久と付き合うことになった」龍之介くんからの簡潔的なメールだった。やっぱり、と思うと同時にボロボロこぼれる涙。でも、何かがおかしい。

「へー夜久先輩と宮地先輩くっついたんですね」
「君、誰?」
「先輩僕のこと存じないですか?残念、僕は先輩のこと知ってるんですけどね、色々な意味で」

いきなり他人のケータイ画面を覗き込む、失礼なぱっつん野郎。ネクタイの色的には1年生だと思うんだけど、誰だかが分からない。見たことがあるようなそうでないような。泣き顔を見られているのに何故だかそんなことは気にならず、逆に安心感を覚えている自分が居て恐ろしい、色々な意味とはつまりどういうことだろうか。

「悲しいですか」
「ううん」
「じゃあ何で泣いてるんです?失恋したんでしょう」
「うん、でも悲しくないの」
「変なの」

くすっと笑った彼が何かと重なった。この子は何を持っているのだろう、私は何に魅了されているのだろう。引き付けられ、目が離せない。木ノ瀬梓です、そう言って名乗った彼を見て思い出す。木ノ瀬くんは、私を夢の中で何度も救ってくれた彼に、顔も名前も仕種も何もかもがそっくりだった。

「先輩、それは僕本人ですよきっと。星詠みかも知れません」
「うーん…」
「それでは僕が、先輩に希望を届けてあげます、だから、」

僕と付き合ってください、ずっとあなたが好きでした





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