(04:手を繋ごう(犬飼))


学園で数少ないというより2人しか居ないうちの1人の女の子はどうやら忙しいようだ。生徒会役員でないのに生徒会長に捕まりこき使われたり、保健委員でないのに保健室の掃除やお茶入れをやらされたり、弓道部の"皆"のマネージャーだったり。仲は悪くはない方なのになかなか2人でゆっくり話せることがなかったのだ。お察しの通り俺はみょうじのことが好きなわけで。

「この前誉部長にすごくドキドキしちゃってさあ」
「へーそりゃなんでまた」
「『みょうじさんは妹みたいですごくかわいいんだ』って頭を撫でてくるからね、子供扱いしないでくださいって返したの。そしたら『僕が頭を撫でる時は相手の子をかわいいと思った時なんだ』って言われちゃって!私もお兄さんみたいだと思ってたところもあったんだけどついドキってしちゃったよね〜」
「へーそりゃよかったな」

俺の気持ちを知ってか否かみょうじはなぜか先程の話題を振ってきた。部長いつのまに…と内心では焦りつつも此処はあえて冷静に棒読みで対応しなくては、男の余裕だ。

「宮地くんにもちょっとドキっとしちゃったあ」
「へーそりゃなんでまた」
「この前クッキーを作ってあげたんだけど美味しい美味しいってすごく喜んでくれてね、すごく笑顔でかわいかったの。そしたらいきなり真面目な顔になって『また今度…あわよくば毎日作ってくれ、お、俺のために』なんて言うもんだから一瞬プロポーズかと思ってドキってしちゃったよね」
「へーそりゃよかったな」

宮地と言えど許さんぞ。


「梓くんにはいつもドキドキされっぱなしだよね」
「んおお、まあ、そうだなあ」
「でもね、この前はきゅんと来たんだ」
「へーそりゃなんでまた」
「翼が抱き着いて離れなくて、懐いてくれるのは嬉しいし犬みたいでかわいいんだけどちょっと苦しいの…そしたら梓くんが翼に退けよって言ってくれたんだけど2人喧嘩しちゃって。梓くんにいいんだよって言ったら『僕が嫌なんです。翼ばっかずるいです…』ってしょぼくれて言うもんだからきゅんってきてつい抱きしめちゃった!」
「へーそりゃよかったな」

木ノ瀬お前計算したな。


「白鳥くんと小熊くんにもドキッとさせられちゃった」
「…あいつらまでか?」
「うん、いきなり真面目な顔になってどっちがタイプか聞いてくるんだもん。ドキッとしちゃった。」

あいつらー!俺に黙って抜け駆けしてたな…というか俺はどうした?ということに気づいた。弓道部員が着々とこいつをドキドキさせてる中自分だけがさせていないというのだろうか。

「私は犬飼にドキッとさせられたいなあ」

その小声すらも聞き逃さず不意打ちに手を繋ぐ。

「!?いっいいい一番ドキッときたよ………」



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