金久保誉1

「今日の部活はまともな練習できそうにないです」
「え、なんでー?」
「なんでって…」
「金久保先輩が居るから大丈夫じゃないの!皆の大好きな金久保先輩だぞ!」
「だからこそでしょう」
「言ってる意味がわからないよ梓くん…」
「?もしかして知らないんですか名前先輩」
「なにがー?」
「なにがって…今日は部長の誕生日ですよ」
「…!?」

一生の不覚。

入学式の時私は迷子になった。知り合いはゼロ、私以外の女子は1人のみ。そんな絶望的な入学式で迷子になってしまった。1人挙動不審に行ったり来たりしていると不意に声をかけられた。

「ふふ、どうしたの?」

それが金久保先輩だった。単純単細胞な私はその優しい彼に一瞬で恋に落ちた。そしてそれから、2年になった今もまだ金久保先輩に恋をしている。

「それでも、誕生日は知らないんですね。単細胞名前先輩?」

くすくすと笑う憎たらしい後輩梓くんに現実に引き戻された。好きな人の誕生日すら知らないなんて本当に好きなんですかね部長のこと。ああ寧ろそれ以来一度も話したことないんでしたっけ?廊下で擦れ違うことも少ないんでしたっけ。名前先輩本当に部長のこと好きなんですかね二度目になりますけど。ぺらぺらぺらぺら話しやがる後輩を一睨み。コイツにこんな話した奴誰だ紛れも無い私だ。もっと慎重に人選すべきだった。

「ねえ梓くん今からでも間に合うかな」
「何言ってんですか先輩話したこともない癖して。知らない人にいきなりお祝いされても迷惑するだけですよ」
「な、なんだい!話したことなら一回あるしその一回が結構長かったんだぞ」
「覚えてませんよ!」
「笑うな笑うな笑うなあ!おばか!…あっ梓くんが一緒に行ってくれれば」
「却下です」

相変わらず手厳しい。言われてみれば金久保先輩は私のことを覚えていないかもしれない。というより多分覚えていない。夜久さんは弓道部で身近にいれていいなあ。…もしかしたら夜久さんと金久保先輩が付き合っているかもしれないフラグにも気付いたぞ私は。絶望的だ。勝手に落ち込んでしまう。

「はーほら名前先輩始業ですよ教室に帰った帰った」
「えっあと5分あるよ」
「5分前行動という言葉をご存知ないんですか?あ、それと」
「なんだいパッツンくん」
「…昼休みにまた此処に来てくださいねしめますから絶対」
「はい…」


「あー部長ですか?昼休み暇ですよね?……」


まったく、手のかかる先輩達だな。



今朝は勢いあまって木ノ瀬コノヤロウをパッツンくんと呼んでしまった。目的地へと参るでありますびしいっと決めてもしめますから絶対という台詞に怖じけづいてしまう。奴は絶対に任務を遂行する絶対にだ。恐る恐る扉をあければそこには、

「木ノ瀬く…、あれ?」
「梓く…、うえ!?」

愛しの愛しの金久保先輩様が居た。確実にはめられたくさいコノヤロウコノヤロウコノヤロウ!

「ふふ…、木ノ瀬君からの誕生日プレゼント、かな」
「はい?」
「ううん、何でもないよ」
「はあ…」

ふふふ、と始めて会った時とかわらない笑顔で笑われてつい顔面が熱くなる。全身が熱くて、脈が早くなって、ああやっぱり好きなんだよ梓くん。私金久保先輩のこと好きだよ。誕生日おめでとうございます、って言いたい。でも気持ち悪がられたら…私ってこんな乙女だったかな。

「名前さん、」
「え、あ、名前…はっはい」
「今日は何の日だと思う?」

今なら、言える。

「金久保先輩、お誕生日おめでとうございます…」
「一か八かだったんだけど知っていてくれたんだ。嬉しいな」
「い、いえ!わわわ私気持ち悪くてすみません!」
「そんなことないよ。そんなことより、頼み事があるんだ」
「なんでしょう…?私にできることなら、なんでも」
「君にしかできない事なんだけど、プレゼントに君がほしいんだ」
「はははははははいいい…!」
「ふふふ」


「名前先輩の誕生日にはもっと過激なプレゼントをあげますよ、先輩達」


HAPPY BIRTHDAY 金久保誉!




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