木ノ瀬梓5

「受験生かあ…」

気付けばもうゴールデンウィーク真っ只中中学3年生になっていた。基本的にやる気ないクール系女子を自称してる私は受験に対してやる気が全くと言って言いほど起きず、進路希望調査は未だに未定。

「受験がなんだいくそくらえだー私はこうやってパソコンに向かってるのが性に合うのよ」

毎日の楽しみのスタスカを起動しヘッドフォン。愛しの愛しの梓ルートの10周目だ。実は後夏はまだ買えてなかったりで早くやりたくて歯ぎしりしてるわけで。周りは所謂パンピーちゃんしか居ないので貸してもらうこともできないのだ。梓はいっそ三次元に来い。最近の私の口癖である。

「なんちってね龍ちゃんも捨て難いな〜神谷ボイス…むふっ」
「何にやけてんの気持ち悪い」

…ホワイ?何故私以外の声が?気のせいだと思えばヘッドフォンをとられた。お母さん何やってんのねえお母さんってば私の私の毎日の楽しみを奪うのですかあなたはそうだよね最近受験受験うるさいもんねでもね私はねピーチクパーチク!!

「寝言は寝て言え!僕はお母さんじゃない!」
「…?」
「久しぶり、名前」
「…??」
「何阿呆面してんの」
「……」

あああああ梓?くん??
何くん付けしてんのヘン気持ち悪。

振り向けば前髪ぱっつんで目がくりくりのとても梓に似ている人物。信じがたいがこれは本物…?どうして三次元に居るのだろうかえっていうか久しぶりってえっあの木ノ瀬くーんー…?

「はあ、何意味わからないこと言ってんのさ。寮生活を送ってる幼なじみが1ヶ月ぶりに帰ってきたのにその態度はなんなの?」
「は?え??」
「まーたパソコンなんてしてるし。星月学園狙ってるって言っただろ今の名前じゃ正直成績足りないぞ」
「星月学園?はい?」
「言っただろう、1ヶ月ちょい前に僕に泣きついて『梓と離れたくないー!私も星月学園行く!』って」
「いや私自称無気力系女子なんでそれは…」
「ちょっとだけ脚色した」

お母さんもお姉ちゃんも梓のことを知っていた。どうやら梓は隣の家に住む幼なじみで今年星月学園に入学全寮制がために家を離れてるとか?やる気のない常に死んだような目をしてる私が梓に関してだけはやる気に満ち溢れているとか?家族ぐるみで一緒に遊園地に行ったとか?

「…おかしいよ。だって私には幼なじみなんて居ないし、梓はあくまで二次元のキャラクターなわけで星月学園だって以っての外で」
「ついに頭逝かれたんじゃないの」


えー…そうなのかなあ。







「…よし、この成績なら星月学園も大丈夫だろう。油断せず頑張りなさい」
「はあ…ありがとうございます」

秋。そろそろ志望校を決定しないといけない時期である。あれから梓は普通にごく当たり前のように存在していて度々帰省しては私にスパルタ授業をしていた。テストの点数も順調にあがりそして個人面談で冒頭の言葉をいただいたわけである。本当に存在してるのか星月学園。まじでか。念のためにスタスカを起動して確認しても梓はちゃんと居るどういうことなんだろうか私にはついていけない。

『もしもし』
「もしもし」
『個人面談どうだった?なんて言われたの』

梓は本来画面越しの想い人だった。それがなんだこれは。私のごく普通の三次元ケータイでごく普通に梓と電話をしている。どういうことなんだろうか。…どういうことなんだろうか。

「先生は大丈夫だって言ってた、油断せず頑張れば大丈夫だって」
『そっかよかったよ』

「ねえ、どうして梓は三次元に居るの?」

『…また僕が二次元のキャラクターだって話?』
「信じてくれないの?」
『信じたいのは山々なんだけど僕には小さい頃の名前との思い出がしっかりあるんだよなあ』
「私にはない…」
『まあさ、』

次元が違おうと僕は名前のことが好きだよ


なんだかこのままで良い気がした




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