木ノ瀬梓4

先輩、今日もかわいらしいですね。照れてるんですか?本当にかわいらしい。
少し高めで且つ心地の良いボイスで囁かれる。そんなことを年下美少年に言われてしまってときめかない人は居ないだろうなとつくづく思う。
まあ私が言われてるわけではないんだけれど。

「月子先輩、今日もきれいですね」
「あ、梓くん、もう、そんなことばっか言って…」
「やっぱり照れてる先輩はかわいらしいです、思わず抱きしめたくなる」

よくそんな臭い台詞が出てくるなあ、と年下の彼に上っ面でだけ感心してる今は部活中。弓道部にマネージャーとして所属している私は毎日のように見るこの光景に少しだけうんざりしている。とっくのとうに飽きたを通りこした。

「おー木ノ瀬やるなあ」
「積極的すぎる…!ご教授願いたい!」
「あ、犬飼くん、白鳥くん」

思わず眉間にシワを寄せれば後ろから同学年の犬飼くんと白鳥くんに話し掛けられた。あーこの2人も月子ちゃん派だな。
私だって彼氏はほしくないわけではないし、むしろほしいわけですが、この学園には月子ちゃんまたの名をマドンナというかわいらしいお方が居られるので皆私は眼中にないというか。まあそんな感じで。
性格は男らしいって言われてしまうし。

「いやお前が気づいてないだけで結構モテるんだって!」
「はいはいありがとねー本当にそうだったらいいのにねー」
「おいおい名前信じてないな?確かにお前は馬鹿だしサバサバしてるし、でも俺結構お前好きだぜ」
「わーありがとう犬飼くん」
「なんで棒読みなんだよ」

本当にこの2人は良い人だと思う。けどね私産まれてこの方告白という行事を体験したわけがなくてですね。はあまあそういうことですよ………ブッ!
ぶつぶつと独り言を言っていたらいきなり頭に衝撃が。いたい…!

「あーすみません存在が薄すぎてよく見えなかったので…頭に拳が当たってしまいました!」

そこには先程まで月子ちゃんを口説いていた張本人木ノ瀬梓。

「いやそれにしても先輩って存在が薄すぎる」
「おい木ノ瀬」
「なんですか、犬飼先輩?白鳥先輩?練習に戻らなくても良いんですか?」
「あのなあ、名前だって嫁入り前の女の子なんだよ」
「え?女の子って月子先輩みたいに愛らしい人を言うんじゃないですか?こんな、男みたいにサバサバしてる人、僕は女なんて認めませんよ」

なんなんだこのぱっつんは。人が気にしてることをよくもまあずけずけずけずけと。誰の協力あって部活ができてると思ってるんだ?お前のタオルなんか、用意してやらない、からね

「うわっ、先輩何泣いてるんですか」
「木ノ瀬お前ついにコイツ泣かしたな…!」
「許さないぞ!?」
「うるさい泣いてない泣いてないばかか!ちょっと目から汁がでただけだ!」
「それを泣いてるって言うんですよ…なんで泣いてるんですか僕何かしました?」
「いやいやどの口がものを言ってんだよ木ノ瀬…」

なーにが僕何かしました?だよ犬飼くんの言う通りだどの口がものを言うかね。私だって本当はかわいい女の子になりたいよ、けどどうせこんな見た目じゃ似合わないし、だからついこんなサバサバしてしまう。前にクッキーを焼いてもってきた時も似合わないと言われたのだ、勿論木ノ瀬梓に。

「…早く練習に戻れば?」
「泣いてたと思いきや今度は睨んできますか。先輩って本当にかわいくない」
「木ノ瀬梓には、関係ない!」

泣いてるところを見られるのが嫌で追い払ったら物凄いドスのきいたオーラを放ちはじめ…こっこわい。思わず白鳥くんの後ろに隠れたら問答無用で木ノ瀬梓に引っ張り出された。ななな何で。

「あーあ先輩って本当にかわいくない」
「だ、だからアンタには関係ない…」
「僕の質問に答えてください」
「は」
「犬飼先輩と白鳥先輩と小熊のことはなんて呼びます?」
「犬飼くん、と白鳥くん、と小熊くん…だけど」
「宮地先輩と月子先輩と部長のことは?」
「宮地くんと、月子ちゃんと、誉部長」
「…それですよ。なんで僕だけフルネームなんですか」
「…自分の胸に手をあてて考えてみたらいいんじゃないの」

思い返せば出会い頭から最悪だった。宮地くんと甘い物の話をして笑ってれば先輩の笑顔は気持ち悪いですね。誉部長とお茶する約束をすれば先輩なんかと2人になったら部長が汚れますよ。犬飼くんに課題のプリントを貸してあげれば先輩って地味なだけあってガリ勉なんですか。白鳥くんに女の子が来た付き合ってくださいと言われた時なんてこんなの女の子じゃないからやめた方がいいんじゃないですか。

「はーあ…気付いてくださいよ」
「…?」

「先輩があまりにもかわいらしいから。皆に人気で嫉妬したんです」


先輩のこと好きなんでね




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