木ノ瀬梓2

僕はいつだって本気ですよ先輩。弓道部の月子先輩について行ったらたまたま対面したあなたが大好きだ。一目惚れだなんて言ったら、あなたはそんなものは一気の迷いだと言いますか。僕はそうだとは思わない。一目惚れから始まる恋だってある、そうですよね?

「名前先輩今日もかわいいですね」
「梓くんまた来たんだ…」
「はい」

宇宙科1年の教室からここの教室って相当距離あるでしょ、なんて僕の心配をしてくれる名前先輩が今日も麗しく愛しい。ああ先輩好きですすごく好きです毎日のロードワークがこんなところで役に立つとは。休み時間の度に走って会いに来る程の体力ができたんですから。

「私いっつも思うんだけど、私より梓くんの方が全然かわいいよ!女の子みたいお姫様みたい!」

先輩…それって全然褒めてないですよね。


馬鹿にしてるんですか




スランプなんて天才天才騒がれている自分には関係のないことだと思っていた。努力なんて自分には関係のないことだと思っていた。宮地先輩が努力努力騒ぐ理由なんて理解できなかったし馬鹿馬鹿しいとしか思えていなかった。努力してもできない奴らは救いようがないなとも思っていた。
それがなんだ今の僕。情けない。情けない。入部し直ぐインターハイの男子団体メンバーに選ばれた。自分の実力はホンモノだと思っていたのに今のこれはなんだ。当たらない的に当たらないかすりもしない。部長がプレッシャーに負けたものの方がまだ見れたものだ。

「触るな!…すみません、僕のことは放っておいてください
「あなたに僕の何が分かるんですか!何も知らないくせに偉そうに口出ししないでください!」

確実に八つ当たりだ、優しくて大好きな名前先輩に八つ当たりをしてしまった。名前先輩は何も悪くないのに申し訳なさそうな顔で僕の方を見る。…すみません、悪いのは全て僕なんです。それさえ言うことのできない自分の非力さを恨む。嫌われてしまったかもしれない。

「ごめんね梓くん。私梓くんのこと何もわかってないのに心にお邪魔しようとした。梓くんには梓くんの考え方があるし私は梓くんのこともっと知りたいよ。…人はね、スランプを脱しようとするとき、楽しむ心を思い出すんだ。思い詰めないで。楽しくやればダメでも後悔しない。お願い梓くん、諦めないで」

僕は思わず目を見開いた、こんな、こんな僕に、


僕に構うのはあなたぐらいですよ




休日のロードワーク中ばったり私服姿の宮地先輩に会った。制服姿か弓道着姿しかみたことないわけでなんだか私服姿というのはとても新鮮だ。名前先輩はどんな服を着るのだろうか。思いたったがさあ行動!というわけでとりあえず先輩に今夜私服で屋上庭園で星を見る約束をこぎつけた。
幸い屋上庭園は寒くも暑くもなくちょうどよい気温でよかった、先輩が風邪ひかなくて済む。おまけに星も月も綺麗に見える。綺麗、なんてつぶやいた名前先輩、あなたの方が綺麗なんですよ。こんな夜は僕だって積極的になりたい。

「名前先輩、付き合いませんか?」
「え、何処に?」

よく言った自分なーんてそんなうまくいくわけないんだよな、はー。
え?なんですか先輩、なんか怒ってるのかって?


違います、あきれてるんです




先輩は鈍感だとても鈍い鈍いにも程がある。僕が頑張って告白してみたのに、付き合いませんかって言ったのに返答が何処にってどういうことなんですか。ああベタな人だ罪な人だ。なんで僕はこの人が好きなんだろう。
僕は最初は自分は月子先輩のことが好きだとばかり思っていた。弓道部への入部をきめたきっかけも月子先輩だった。弓を放つ月子先輩を見る度なんだか幸せな気分になれた。そんな月子先輩の制服姿がみたくて教室まで行ったら他の科の友人と話していた、その友人が名前先輩だった。月子先輩の時とは違う、胸がきゅっとくる感覚だった。
この時僕は悟ったんだ、自分が、自分の好きな人が月子先輩ではないと認めたくないですが、


認めたくないですが、あなたが好きです




梓くんお話があるんだけど、部活終わったらでいいから聞いてほしい。かわいいかわいい名前先輩からのお呼びだし。もちろん僕が断るわけがなかった。その日の部活はいつも以上に調子が良く気持ちがよかった。慌てて片付けをする僕を見て部のみんなは驚いていたがそんなの気にしている暇はない。先輩が待っているのだから。

「梓くん、部活お疲れ様」
「ありがとうございます名前先輩、その言葉だけで癒されます」
「あの梓くん、この前の付き合いませんかって、こここ告白だったんだね」
「東月先輩にでも相談しましたか」
「…はい。まだ遅くなければ、つ、付き合いませんか」


もう遅いですよ


「なんて冗談です。好きですよ、名前先輩」


僕は今、とってもしあわせだ



Title by 確かに恋だった




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