木ノ瀬梓1

私には大好きな人がいる。その人は見た目はかわいいし声もどちらかといえば高いのに本当はすごくかっこよくて男らしくて。私はそんな人に振り向いてほしくて毎朝髪をアイロンナチュラル且つかわいらしいメイクの研究云々色々頑張ってる普通な女の子なわけです!
本当は彼とは高校進学を機にさよならするはずだった。私は制服のかわいらしいごく普通の女子校彼は星月学園に進学予定だった。でも彼と離れるのに堪えられない私も星月学園への進学を決めた。うざがられる覚悟で。

「なんで名前は休み時間の度に僕に会いに来るのかなあ」

はーあ、とあからさまに嫌そうに呟いている目の前の男こそが私の想い人兼幼なじみの木ノ瀬梓。私が頑張って頑張ってかわいくなろうとする毎に私への態度が酷くなっていくのは気のせいじゃないですよね梓さま。
同じ星月学園に入れても梓は宇宙科私は天文科自ら会いに行かなければ会えないんだ。だから私はストーカーの如く休み時間の度に宇宙科の教室に遊びにきている。私強い子女の子。

「梓に会いに来てるわけないでしょ!」
「じゃあなんで来るのさせっかく違う学科なのに」
「翼に会いに来てるの!」

ああ…またやってしまった。どうしても梓の前では素直になれない。で、でも私が梓の前で素直になれないのは梓が私を女の子扱いしてくれないせいなんだから!…我ながらかわいくなさすぎる。

「名前って本当にかわいくない」
「は!?なに梓うざい!梓だってかっこよくないし!」
「少しは先輩のこと見習ったら?学園のマドンナと自分が正反対なこと気付いてる?」

どうせ会いに来てくれるなら先輩がいいのになーなんて。ぐさり、ぐさり。毎日毎日梓にかわいくないかわいくないと言われてしまう。先輩とは正反対と言われてしまう。かわいいって思われたくて頑張って自分磨きしてるのに。わざわざ先輩と比べることないのに。
私だってそれなりにモテるんだから。3日に1つは電話帳へ名前が増えていくし。告白だって何度もされたことあるんだから、先輩じゃなくて私を選んでくれた人もいるんだから!

「もういい翼のとこ行く!」
「は?なんでさ」
「梓が嫌いだから!」
「…なんかむかつく」

「この際だから言わせてもらうよ。大人しく女子校に行っておけばよかったものをなんでわざわざこんな男だらけの学校に来た?どうして毎日毎日かわいくしてくるのさこの学校は女子が2人しか居ないって分かってるよね。こんなにスカート短くしてぱんつみせたいの?あといっつもいっつも翼翼翼って名前は毎回翼のとこにばっか行っていちゃいちゃして。なんなら僕への当てつけという風に受け取るけど。それとも僕が嫉妬すると思って?さあ答えなよ」
「あ、梓…?」
「早く。答えて」

こんな梓は初めてだ。いつもより声が低くて男らしくて、私はそんな梓にどうしたらいいか分からずに視線をそらせようとするも梓の真剣な目線に邪魔されてしまう。

「あ、あのね梓」
「うん」
「私がこの学校に来たのは梓を追っかけてだよ。休み時間の度に来るのも梓に会いたいから、でも梓は先輩の話ばっかするから聞くに堪えられなくて翼のとこに逃げてるだけ。梓が嫌だっていうなら今から女子校にでもなんでも転校してあげるよ!それに翼とは発明のリクエストをしてるだけで別にいちゃいちゃしてるわけじゃ…!そもそも梓の方が先輩先輩先輩先輩煩いのよ。私が毎朝髪型セットしたりかわいくなろうかわいくなろうと頑張ってるのも梓に振り向いてほしいからだよ!なのに梓は先輩先輩って私の方なんて見てくれない!でも私なんか怒られてるし意味わかんない!」

「なーんだ、よく分かった」
「は?」
「僕は名前が好きで名前は僕が好き。つまり僕たちは両想い。女子校にはいってくれれば悪い虫がつかないから安心だったけど両想いなら今の状態の方が都合いい」
「…といいますと?」
「僕たちがラブラブってこと皆に公言すればいい。…名前、好きだよ」

ちゅっとリップ音
あつまる視線




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