木ノ瀬梓10



「先輩、行かないでください…」
「…梓くん」

大好きな先輩が行ってしまう、その事実がとても悲しくて、引き止めてしまえば先輩が困るということもわかっているしなにより自分自信男としても情けない。それでも、脳に駄目だと静止をかけても、やはり口が勝手に手が勝手に、全身が勝手に引き止めてしまうのだ。なんて最低な男なんだ僕は。乾いたような笑いをこぼせば、眉を下げる先輩。ただの自分の我が儘なのに。梓くん、ごめんね。そればかりを言う先輩に若干の苛立ちを感じてしまい、またそんな自分を情けなく感じるのだ。

「どうして一緒に行けないんですか?」
「だって…」
「僕では先輩のお供には役立てませんか」
「うーん…」

君がもう1年早く生まれてたらね、一緒に行けたのにね修学旅行。
先輩は素敵な笑顔でそう言った。

「…」
「学年行事だから仕方ないと思うんだよね」
「…」
「だからね、梓くん?」
「嫌です離しません」
「お願いだから離してください!集合整列時間まであと2分しかないの!錫也が!月子が!ものすごい怖い顔してるからほらあれ見て!」
「先輩しか目に入りません」
「ふざけたことぬかしてないでさ、あの、離し」
「いいこと思いつきましたた、先輩が留年したらいいんですよ!」
「梓くんって頭良いんだけどたまにすごく馬鹿だよね?」
「先輩と一緒に行けるなら馬鹿でも構いません!先輩!先輩!」
「月子ちゃーん!たーすーけーてー!」
「もー!名前困らせたらダメじゃない!」
「夜久先輩・・」
「お土産買ってくるから、ね?」


先輩がくれた鮫のストラップは一生の宝物になりそうだ。




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