木ノ瀬梓9

「梓くん、もう終わりにしよう?」

放課後、勇気を出して梓くんと向き合った。私がそう言えば梓くんは元々大きめな瞳を更に大きくした。まるで信じられない、とでもいいたげな。なんだかとても申し訳ない気持ちになって、それでも私は負けられない。今日で終わりにしなければいけない、そう決めたのだ。さらさらと風がふきカーテンを揺らした後に私たちの髪の毛を揺らす。そして、息を飲む。

「ね、梓くん、」
「…先輩は僕のことを好きじゃないんですか、」
「は」

私の方が背が低いはずなのに上目遣いで見られてしまい少し動じてしまう、正直に好きだよ、と返せば少しだけ責められた。好きなだけでは許されないってことをこの子は知らないのだろうか。何でですか、っと若干怒鳴られる。思わず俯いた私を焦ったように宥めてくれる梓くんに優しさを感じた。この子は本当に、優しい後輩なんだ。

「だけどね梓くん」
「なんですか」
「確かに梓くんは私にとって大好きなかわいい後輩だけど先輩をこき使うのはどうかと思うのだよ私は!毎回毎回毎回毎回毎回パシリに使ってちょっかい出してきて!出会い頭の優しかった梓くんを思い出してよ、月子ちゃんと話してる時の梓くんを思い出してよ!ね、梓くん、今ならまだ遅くないってばよ?ね?梓くん戻っておいでー?」
「…」

どんどんにっこり笑顔に変わっていく。あ、これはまず…気付いた時には既におそし、頬っぺたをぎゅーぎゅーと引っ張られる。い、いたい、いたいってば、せっかく朝頑張ったアイメイクが涙で台なしになるよー!

「先輩とっても不細工な顔してますよ」
「だ、誰のせいだと…」
「あ、先輩!まだ購買ってやってますよね?焼きそばパン買ってきてくださいよ」
「ねえ!ちょっと!さっきの話聞いてた!?」
「代金は先輩持ちで、買ってきた後は全部アーンで食べさせてくださいね」
「もうもう!だから今日で終わりにするって!」
「今日はまだ終わってないですよさあ早く」
「ぎゃーなにも聞こえない!無理!チクショー!」
「…何やってるんだ?」

救世主登場。大切な幼なじみ錫也が入ってきた。ほら帰るぞ、と手招きする錫也を指さし、そういうわけだからじゃあねと梓くんから逃げる。脱出成功。ありがとう錫也。

「先輩が僕を後輩としてしか見てないのも知ってます、東月先輩と互い幼なじみと公言しているけど実は両想いなのも知ってます。それでも僕は、先輩をパシリにしたりちょっかい出してるのは、あなたのことが好きだから。気付いて、ほしいから、…なんて、言えたら楽なんですけどね、」




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