木ノ瀬梓8

そよそよ、と風が吹く。さらさら、と笹が揺れる。本日は七夕、星月学園周りからの通称星のスペシャリストが通ってる田舎にある学校、にとって本日は一大イベント。のはずなのだが、何故か屋上庭園には私達2人と笹と星。ああお星様、なんて絶景なんだろうか。どんなに素晴らしい人間だって星達の美しさには敵わない。隣に居る彼はすかさず、先輩の方が美しいです、と言う。自分自身は褒められているのだろうけどなんだか星達が馬鹿にされた気がして、私は、怒った。それこそ彼は固まってしまったけど、私はそんな彼を見てもまったく動じない。動じる必要性はまったくもって見当たらない。冷たい人間と思われても、構わない。

「せーんぱい、いつまで怒ってるんですか?かわいらしいお顔が台なしです、なんて、怒ってる先輩も笑ってる先輩に劣らず違ったかわいさを持ってるんですけどね」
「…うるせーもうお前黙れ」
「やっと喋ってくれましたね、僕にやけそうなんですけど責任とってください」
「もうにやけてんだよこの馬鹿男、…まったくもう」
「はは、機嫌なおった。今の先輩の顔、とってもかわいらしいです。まるで、」

お星様、みたいです。
真面目にかつ照れながら梓は言った、中性的な顔立ちのくせにたまに見せる男らしい表情が好きなのだけれど、今のは若干それに近かった。今度は私が頬を染める番で、それをみて梓は笑うのだ。おまけに、僕達彦星と織り姫のようですね、なんて言い出すから今度は私がついふきだしてしまったら少しだけむっとしてしまった。ベタだね、って笑えばうるさいですよ、と返ってくる。

「なんかさ、やってることいつもと変わらないね?もうすぐ今年の七夕も終わっちゃうのに」
「何言ってるんですか、食堂の本日限定七夕定食食べてご満悦だったのはどこの誰です?」
「はーい私です!いいじゃん七夕ゼリー一口あげたじゃん?美味しかったでしょ?」
「先輩があーん、ってやってくれたらもっともっと美味しかったんですけどね」
「あーはいはいっと」

ふう、となんとなく溜息をしたら、隣からも同じタイミングで聞こえてきたので笑ってしまった。以心伝心ですかね、ん、まあ意志の疎通はしたかもしれないね。再び空を見上げ、ぼーっと星を見つめたらつい、綺麗、と零してしまい再び梓がすかさず、先輩も綺麗です、と返してきたデジャヴュ。とりあえず背中を小突いてやったら余裕そうに笑われ、そのまま梓の方を見てるのも癪なのでふと反対方向を見遣れば、笹と短冊があった。

「あ、」
「あ?…ああ、短冊ですか、先輩書きますか?」
「はは、書こうかな」

織り姫と彦星のような素敵な恋人関係が築けますように

「…先輩って本当、かわいらしいことしますよね」
「悪いか、梓は書かないの?」
「僕は書きません、というか願い事はありません」

願いは、自分の力で無理矢理にでも奪い取ってみせますよ、なんてね

不覚にもときめいた。




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