木ノ瀬梓7

私は苦手である、何がと聞かれて口に出すのも忌ま忌ましいと思う程にだ。弓道部で宇宙科で前髪のパッツンさえも魅力的に熟してしまう美少年、おまけに言うと容姿とは裏腹に性悪で私の隣の席の彼、木ノ瀬梓。正直精神的に病みますとか言っていいですか、ぶっちゃけた話ストレス発散に拳をたたき付けすぎて枕が変形してきている。本当に毎日毎日毎日毎日嫌がらせばかりで、髪の毛を引っ張られるなんて1日に5回は必ずあるし、わざとシャーペンの芯を床にばらまかれたり。1本1本回収するのはとても気が滅入るので辞めていただきたい。他にもまだ色々あって、教科書貸してよ、なんて言われて貸した私も馬鹿だった、全ページに落書きつきで返ってきた。落書きについては寧ろ褒めてやる、物凄く大変だっただろうに…勿論嫌み!

「名前落ち着けって〜」
「翼くんだって酷いと思うでしょ!」
「うぬぬ〜…梓にも、色々あるんだ」
「!?翼くんは奴の味方なの!」
「俺は梓の気持ち分からなくもないからな」
「翼くんに見捨てられた…!滅びろ木ノ瀬!」

もう本当に病む私不登校になってもいい。疑問符、またの名はクエスチョンマークが付いていないのは勿論決定事項だからだ。マイオアシス翼くんに見捨てられるとは、なになんなの従兄弟ってそんなに親しい関係でしたっけ私には分からない。翼くんは絶対に私の味方だと思っていたのだ、もう生きていけない。

「大丈夫、名前には僕が居るから。ほら、今生きる希望湧いたでしょ」
「うっわ出たな木ノ瀬はげろ…いっいだっ髪の毛引っ張らないでごめんなさいってば!」
「これにはお前がはげろって意味がこめられてるんだよ、分かる?」


一言暴言を吐いただけで数倍にもなって返ってくる。いつもながらもう涙目だ。私が彼に抵抗できない理由の1つで、一発頬にパーでパンチをお見舞いした日には絶対グーで三発くらいは返ってくるだろう。男のくせに仕返しなんて本当に心狭いな、と木ノ瀬くんを見遣れば明らかに正当防衛ですという顔をしている、それはそれは嬉しそうに。おかしい、彼に何かしたのか私は何故いつも嫌がらせを、正当防衛の使い方間違ってるのだろうかこやつは。

「あーいたかった、毎日毎日引っ張られてそろそろ本気で抜けそう、木ノ瀬くん絶対私のこと嫌いだよね」
「うん、嫌い」

ヘラッと笑い飛ばしながら言うつもりだった。返ってきた言葉は想定内か否か、そこまではっきり言われれば勿論私だってショックだ。というかそもそも嫌がらせされてる私の台詞なのではないかなパッツンよ。嫌いなら関わるな、あっまた髪の毛いたたたた。

「泣くなよ、僕に嫌われるのがそんなにショックだったんだ、それはそれは」
「一度自分の手の行方を確かめてもらってもよろしいでしょうか?あのですね、この涙は髪の毛引っ張られて痛くてですね」
「まあそう落ち込まないでいいから」
「シカトかよ!」
「あのね、いいこと教えてあげる」
「…」
「好きの反対は無関心なんだよ」
「はあ」
「じゃあ嫌いのは反対は?」
「何がおっしゃりたいのかさっぱりです」
「つまり、僕のは、ただの照れ隠し」


途端に塞がれた私の唇、勿論塞いでるのは木ノ瀬くんのそれで。

「憎たらしい程名前を愛してるんだよ」

ほほほ本気なのか木ノ瀬くん。




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