連載 | ナノ


「名前久しぶり、頑張ってる?」

珍しい、水色頭が顔を出した。普段はさっぱり顔を出さないのに、今更何の用なのかな、幼なじみの誉くん?嫌味ったらしく言えば、ごめんごめん僕もいろいろ忙しかったんだよ、と心底申し訳なさそうな表情で返ってきたので許してやる。良いやつだから憎めないんだよなあ、と大切な幼なじみを見てため息1つ。

「最近はどう、ちゃんとやってるの?」
「ちゃんとやってますよーやっと琥太郎様に恩返しできそうです」
「…やっぱりバイトじゃなくて、」
「私はこの生活にちゃんと満足してるよ」
「…名前がそう言うなら、僕にはなにもできない」

また申し訳なさそうな表情で笑う誉を見て心臓が痛んだ。誉はきっと全部知ってる、私が最近沢山の友達ができたことも、自分がこの学園の生徒だったらなと思ってしまう回数が増えてきてることも。多分だから今日様子を見に来てくれたんだと思う。私の幼なじみは本当に良いやつです、少しだけ自慢げに笑ってやった。

「ふふ、名前だって良いやつ、だよ」
「あら、やだ!誉さんお上手ー!」
「相変わらずだなあ。あ、そうだ。君に会いたがってる人が居るんだけど会ってくれないかな?」
「え?だれー?」
「残念、会うまで秘密にしてほしいって言われたんだ」
「何それーいつ会えるの」
「バイトは何時に終わるの?」
「あ、あと15分で終わるよ」
「じゃあそれから、待ってるよ」
「いやそんな待たせるわけには、」
「いいからいいから」

普段のバイトなら15分というものは呆気ないものなのだが、今日は誉を待たせていることもありとても長く感じてしまった。実に申し訳ない。お先に失礼しますと言えばおばさんがお疲れの一言と一緒にパンを3つくれた。どうやら先程の話を聞いていたらしく、みんなで食べなさいとのこと。ありがとうございます、本当に嬉しいです。終わったの?聞き慣れた声に身を翻すとそこには、

「誉!と、前髪、くん…?」
「誰が前髪くんだ誰が!」
「あ、いや、つい出ちゃって、ごめんなさい前髪くん」
「本当に失礼なやつだな…」
「ふふ、一樹ごめんね。名前は少しだけ素直すぎるからね」
「…まあ、いい。お前が名前だな!」
「あ、はい名前です?なんでしょう」
「俺は星詠み科3年でこの学園の生徒会長の不知火一樹だ!」
「はあ」
「お前も今日から生徒会にはいれ!」
「はあ…、は!?」

いや私この学園の生徒じゃないんですが。