連載 | ナノ


「メロンパンくださーい」
「はーい、150円です、ちょうどお預かりします。ありがとうございました」
「苗字さんはいくらで買えますか?」
「私は売り物じゃないですよ」

毎度のことながらつれないなー、とブーイングをしてくる男子生徒を、後ろがつまってますから、と営業スマイルで追い払う、これが私の日常。私は事情もあり星月学園の購買でバイト時偶食堂のお手伝いをしている、ただしこの学園の生徒ではない。学園内にはマドンナが居るらしいのでほとんど男子校の状態でも私の噂は広まらない、ひっそりしたいのでちょうど良い、が毎日購買に来るような男子生徒には先程のようにからかわれたりしてしまう、そんな彼らの中での私は年齢不詳にも程があるお姉さん、で通ってるらしい。ここまで来たら年齢は非公開、みたいな。案外君達と変わらないのかもよ、まあ非公開、みたいな。

「…ふう、」

お昼はやっぱりすごい人の数で、只今レジ係が私のみ手が回らない手が回らない。メロンパンください!や焼きそばパンください!、おにぎりひとつ!とぎゃーぎゃー飛び交う注文、お願いだから順番にお頼みしたい。一段落して今まだ残っているご飯類はチョココロネとホイップパン。他にはデザート類。美味しそう、だな。疲れると甘いものに目がいってしまうのだが、店員である以上それに手を出すことは許されない、私は非常に疲れた。

「む。苗字」
「あ、宮地くん!いらっしゃいませ!」
「ああ。…久しぶりだな、最近は見かけなかったが、何したんだ?」
「食堂の奥で皿洗いしつつおばちゃんに購買用のスイーツ開発してくれないかと交渉に行かされてたよ」
「成る程な、お疲れ」
「ふふ、ありがとう」

学園内での数少ない友人、宮地くん。私の癒し人ランキングトップ5に入る彼を見ていたらつい、はあ、安心をしたのか溜息が出てしまって、目の前で眉間にシワを寄せられた。どうしたの私何かしちゃった、と問えば、ああ、いや、違うんだ、と返ってきた。では何故だろうと思っていると、宮地くんはいきなり引き寄せられるようにスイーツコーナーの方へ行ってしまった。本当にスイーツが好きだな、なんて思っていたら、プリンとパフェとホイップパンを抱えて戻ってきた。

「宮地くん甘いもの本当に好きだねー」
「あ、いや、甘いものは好きだが、これは」
「あっ最近誉元気?幼なじみが頑張ってるってのに、顔を出しにすら来てくれないなんて薄情よねー、はい、680円になります」
「部長は忙しいから、仕方ないんだ、ほら」
「はいはい、ちょうどお預かりしました」
「…」
「宮地くん、買ったもの置いて帰ってどうするの」
「お前に、やる」
「…え?」
「疲れてる時は、甘いものが一番だからな」

此処はお前の笑顔がないと始まらないだろう?ふ、と笑んで宮地くんは帰って行った、