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一先ず俺たちは店に戻った。
濡れ鼠の俺が店に入ると床が濡れたが、マスターは気にしないでと言った。

「いや、気にしますよ。これ拭くの俺だし…」
「……智哉くん、まだ続けるつもりなのかい?」

マスターが意外そうな顔をする。
いや、やめるとか言ってないし。ただ帰るって飛び出して、雨に打たれて帰ってきただけ。あ、スゲーダサいな俺。

「マスターは俺が辞めた方がいいっスか?」
「い、いや……出来れば……残ってくれるなら、その方がずっと嬉しいが」
「……マスター」

なんか赤くなってるところ悪いんすけど、俺、割とやばい。寒くて歯がガチガチだ。

「と、とにかく君はシャワーを浴びてきなさい! 着替えとかは用意しておくから」

マスターに押し出され、俺は二階のマスターの住居へ。
風呂が二階にあるとか珍しいよな。何気にキッチンまであるし。

脱衣所で濡れたシャツやエプロンを脱ぐ。ふぇ、鳥肌立ってる…。
この後マスターが入るつもりだったのか、バスタブには水が張られていたけど、流石に他人の家の風呂のお湯を沸かすのはアレな感じがしたので、シャワーで我慢する。

ざぁあぁぁ。
熱いシャワーを頭から被る。肩のぞくぞくした寒気が治り、俺は極楽気分だ。
折角だし髪も洗うかな。都会の雨はなんとなくペトペトしてる気がするんだわ、いや、俺ここの生まれだけどね。

シャカシャカシャンプーを泡立てる。リンス入りを使ってるんだな、マスター。楽だもんねこれ。

「智哉くん、着替えを置いておくから」

マスターが脱衣所で声を上げた。でも俺が返事する前にいそいそと出て行ってしまう。
あー、気にしてるな、これは。いや、自業自得だよね、だっていきなりチューしてきたのはマスターだし。

……このシャンプー、マスターの匂いなんだな、そういえば。普段は珈琲のほろ苦い匂いだけど、風呂上りはきっと今の俺みたいな感じ……。

あー、なんか変だ俺。やっぱり風邪? それともこら、新手の病気?



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