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双子と兄の分の弁当を用意する。具はいつも前日の夕食のついでに作っておくのでご飯と一緒に詰めるだけだ。

「シュウくん、今日の弁当なに?」
「生姜焼き。あと那智が好きなほうれん草とカニカマの胡麻和えもつけたぞ」
「お、ラッキー。シュウくんの弁当俺大好きだよ」
「大げさな奴だな」

那智と智樹にそれぞれ弁当を渡す。運動部で身体を動かす智樹には二つ分、昼食と部活の前後の間食用だ。
智樹は二つ分の弁当を受け取りながら、何か言いたげに周平を見つめた。

「どうかしたか智樹?」
「……シュウ」
「?」

なかなか智樹は口にしない。もともと普段から口数が多くないため周平はそこまで気にしなかった。

「ふああ、おはよ」

結局智樹の言いたかった言葉は聞けず終いだった。大あくびをしながら、家長である草平が現れたからだ。

「おはよう兄さん。珈琲飲むか?」
「ん、くれ。……なんだ二人とも、学校遅れるぞ?」

草平はテーブルの上に置かれていた朝刊を広げながら、双子の息子に言う。
双子は顔を見合わせた後、登校していった。

「これ、兄貴の弁当。忘れずに持ってけよ」

双子が出ていって手が空いた周平は、自分でマグカップに珈琲を注いで一息ついた。
草平はむしゃむしゃとトーストを齧りながら、僅かに苦笑した。

「すまんな、弁当作るの大変だろ?」
「そんなでもないよ。大抵昨日のうちにオカズ作ってるから、朝は詰めるだけだし……にしても、やっぱり高校男子は食うな、特に智樹は。背もどんどん伸びてるし、そろそろ抜かされそうだ」

弁当を作るようになったのは双子が高校に上がってからだ。それまでは草平も社食を利用していた。

中学までは給食があったが、高校からは無い。
最初は購買か学食を利用する予定だったのだが、なかなか食費が嵩張る。特に智樹が。

大野家の経済事情はそこそこ安定している。だが、長年炊事担当していた周平は倹約癖が身に染みており、エンゲル係数の跳ね上がった家計簿を見て弁当を作ることに決めたのだ。

懸念であった双子の反応も上々。
今時の高校生だから叔父さんの手作り弁当なんて恥ずかしいだろうと周平は予想していたが、特に文句も無く受け入れられた。一応だが、なるべく双子の好物をいれることにはしている。



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